キミたちがいつまで経ってもオロカなのはどういうことでわん!
つらつら考えるに、基本がなっていないのでわん。四書は朱注で読んでこい、五経も一応目ぐらいは通してこいでわん。
・・・と言う前に「蒙求」ぐらい読んでおかねばならないでわん、と考えて、「蒙求」の講義コーナーを設けてみたでわんわん。
「蒙求」は唐の李瀚がそれまでの時代の代表的な人物や故事を記憶しやすいように、四字一句(隔句押韻)で二句ワンセットの韻文形式の標語にしてまとめてくれたものでわん。全部で五百九十六句ある。
四字だけでは記憶がしやすいのですが、故事の中身がわからないので、李瀚はそれぞれに出典と特筆事項を付記してくれた。これを「古注」というのだが、これだけではわかりずらいと考えた南宋末の徐子光というひとがもう少し詳しく、典拠を引いて注をつけてくれた。これを「新注」という。
その後、シナ本土では「古注」が散逸してしまい、現在に残るのは「新注」の方だけである。しかも、本文である四字一句の方を標題、「新注」を「本文」だと誤解するようになってしまったらしいが、それはまったくの間違いである。ところで、ニホン国には平安時代、勧学院という学校がありましたが、この勧学院の必須科目に「蒙求」があり、ために当時「勧学院の雀は蒙求を囀る」(ぐらい、勧学院ではこの書を毎日声に出して読んでいる)と云われたほどであった。この勧学院で使われたテキストは、唐国から直輸入の「古注」本でありましたので、現在、ニホン国だけ「古注」が遺されているのであるでわん。
以下に、四字一句の「本文」を掲げる。(もちろん、全部そろうには年月を要するであろう。めんどくさいので)
下線のついた句についてはクリックすれば「新注」を紹介したページにいけます。
とはいえ、「蒙求」は大量に市販されているので、それを買ってきて読んだ方が速いので、興味のあるひとは本屋さんで求めてみてください。
なお、「蒙求」の書名は「易・蒙卦」の
「童蒙求我」(童蒙の我に求むるなり)
――わしが教えたいのではない、幼くて何も知らんガキンチョ(童蒙)がわしに教えてくれ、と求めるので教えてやるのである。
に基づくこと、言を俟たない、でわん。さて、キミたちは「求め」ているか?
(付記)梅宇先生・伊藤長英(←伊藤仁斎先生の次子)によると、
・・・勧学院の跡地には、現在(江戸中期)は三条の南、壬生の東に勧学院という仏寺の塔頭がある。諺に「勧学院の雀は蒙求を囀る」と云うゆえであろうか、
それより西の野中に「雀の森」と云ふ小さきなる森あり。笑ふに堪へたり。
という。(「見聞談叢」165項)
人民としては、笑われるとちょっとむっとしてしまうところである。
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巻上 典拠 登場人物 注に出る本文以外の故事等
1.王戎簡要 晋書 王戎 視日不眩
2.楷清通 晋書 楷 武帝策得一
3.孔明臥龍 蜀志 諸葛亮 三顧
4.呂望非熊 六韜 太公望呂尚、文王
5.楊震関西 後漢書 楊震 鸛進三魚
6.丁寛易東 漢書 丁寛、田何
7.謝安高潔 晋書 謝安、高刀@ 蒼生を如何
8.王導公忠 晋書 王導、元帝 蒼生何由、吾蕭何
9.匡衡鑿壁 漢書・西京雑記 匡衡、文不識 無説詩、客作
10.孫敬閉戸 楚国先賢伝 縄を以て頚に懸く
11.郅都蒼鷹 漢書 郅都、竇太后 匈奴偶人を作る
12.寗成乳虎 漢書 寗成、公孫弘 束湿薪、狼牧羊
13.周嵩狼抗 晋書 周嵩、三子、王敦
14.梁キ跋扈 後漢書 桓帝、質帝 鳶肩犲目、朝廷為に空し
15.郗超髯参 晋書 桓温 能令公喜、能令公怒
16.王G短簿 晋書 桓温、謝玄 大手筆の事、肥水の戦、風声鶴唳
17.伏波標柱 後漢書・広州記 馬援、徴側 老益、矍鑠
18.博望尋河 漢書・史記 張ケン 持節、支機石
19.李陵初詩 漢書・史記 李陵、蘇武 降匈奴
20.田横感歌 史記 田横、高祖、二客、五百人 自剄、李周翰「挽歌論」
21.武仲不休 後漢書 傅毅 魏文帝「典論」(文人相軽)
22.子衡患多 晋書・述異記 陸機、張華 獲二俊、じゅんさい、筆硯を焼く、華亭の鶴唳、黄耳
23.桓譚非讖 後漢書 桓譚、光武帝
24.王商止訛 漢書 王商、成帝、王鳳 真漢相
25.ケイ呂命駕 晋書 ケイ康、呂安 ケイ康好鍛
26.程孔傾蓋 孔子家語 孔子、程子、子路
27.劇孟一敵 漢書 劇孟、周亜夫
28.周処三害 晋書 周処、孫秀 忠孝不得両全、大臣殉国
67.時苗留犢 魏略 時苗 清廉潔白
68.羊続懸魚 後漢書 羊続、霊帝 清廉潔白、「東園」
99.荀陳徳星 異苑 陳寔、荀叔 賢人聚
100.李郭仙舟 後漢書 郭林宗、李膺 送別
109.季布一諾 史記 高祖
110.阮瞻三語 晋書 王戎 三語掾、無鬼論
111.郭文遊山 晋書 王導 隠棲
112.袁宏泊渚 晋書 謝安 秋夜昇舟
123.廣客蛇影 晋書 楽廣 まぼろしにより病気になる
124.殷師牛闘 晋書 殷仲堪 殷師 孝武帝 韓康伯 アリの音が牛の戦いに 親孝行
139.胡威推縑 晋書 胡質、武帝 清廉
140.陸績懐橘 呉志 袁術、孫権
141.羅含呑鳥
142 江淹夢筆 詩品 郭璞
183 蘇韶鬼霊 三十国春秋 蘇節 死者と生者
184 盧充幽婚 孔氏志怪 崔少府 死んだ娘と結婚、三月三日水上に車来たる
193 孫康映雪 孫氏世録
194 車胤聚蛍 桓温、呉隠子
199 戴逵破琴 晋書 武陵王、伶人とならず
200 謝敷応星 戴逵、占星
201 阮宣杖頭 晋書 王衍 酒店、未婚
202 畢卓甕下 甕間に縛せらる
203 文伯羞鼈 国語 南宮敬叔、露賭父
204 孟宗寄鮓 呉録 李粛、孫皓 魚官、孟宗竹
209 阮放八雋 晋書 羊曼等 中興の名士
210 江キ四凶 晋書 羊耼等 大食、大肥など
241 巫馬戴星 呂氏春秋 242とセット 任力
242 宓賤弾琴 〃 堂を下らず、任人
245 逢萌挂冠 後漢書 王莽、光武帝 隠退、土器をかぶる、「三綱」
246 胡昭投簪 魏志 曹操 隠退、群盗これを避く、「一介の野士」
247 王喬双鳧 後漢書
248 華陀五禽 後漢書
263 宿瘤採桑 古列女伝 斉閔王 奇女、賢女
264 漆室憂葵 古列女伝 魯穆公、晋客 無兄、「河潤九里漸洳三百歩」
273 仲連蹈海 史記 新垣衍、平原君 反秦の意志
274 范蠡泛湖 史記 越王勾践 鴟夷子皮、陶朱公、亡命、五湖
281 伊尹負鼎 史記 成湯王 賢者、料理人
282 寗戚叩角 三斉略記 斉桓公 賢者
287 晏御揚揚 史記 晏嬰 賢者、賢妻、御者
288 五鹿嶽嶽 漢書 五鹿充宗、朱雲角を折る 賢者、易
299 孔伋縕袍 説苑 孔伋(子思)、田子方 二旬九食、狐白裘
300 祭遵布被 後漢書 祭遵、光武帝 韋袴布被
363 仲文照鏡 晋書 殷仲文 槐樹嘆
364 臨江折軸 漢書 臨江王、景帝、郅都 燕
367 徳潤傭書 呉志 闞澤、孫権 家世農夫
368 君平売朴 漢書 厳君平、揚雄 成都 卜筮恵衆、百銭下簾
369 叔宝玉潤 晋書 衛玠(叔宝)、衛瓘、王済
370 彦輔氷清 晋書 楽廣(彦輔)、夏侯玄、衛瓘、王衍、「世説新語」
373 玄石沈湎 博物志 中山酒家、千日酒
374 劉伶解酲 晋書
441 老莱斑衣 高士伝 嬰児戯 「老莱子妻」
442 黄香扇枕 後漢書 天下無双江夏黄童 陶淵明曰、暑則扇床枕、寒則以身温席。
473 孟嘗還珠 後漢書 合浦太守
474 劉昆反火 後漢書 虎負子渡河 偶然耳 書策
509 史魚黜殯 孔子家語 衛霊公、蘧伯玉、彌子瑕、孔子 屍諫
510 子嚢城郢 左伝 楚共王、遺言して社稷を守らんとす
517 顧栄錫炙 晋書 趙王の乱
518 田文比飯 史記 自剄
557 不占殞車 新序 怯如是、崔杼の乱
558 子雲投閣 天禄閣より自投、醤瓿を覆う
573 陳遺飯感 南史 焦げ飯、母失明
574 陶侃酒限 晋書
611 鮑照篇翰 南史 劉義慶、文帝
612 陳琳書檄 魏志 魏太祖、癒頭風
(以下、更新を待て)
(特別付録)「皇朝蒙求」 東都のひと山下直温が幕末に我が国の名人たちの逸話を「蒙求」に倣って収集したもの。明治14年、息・山下直太郎が刊行。
頼遠院耶 太平記
明雲兵厄 徒然草・源平盛衰記
秋津舞踏 江談抄
公助受杖 古今著聞集
「久米失仙」「隠者惜別」 今昔物語集