われわれはこのモグのように怒られることが非常に多い。
月曜日。一日でだいぶん消耗した。もうダメだー。
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蘇州楓橋にうちの別荘があったんですが、
港通運河、中有青石一方、長可四五尺、蓋塚墓間物、淪落于此。
港、運河に通じ、中に青石一方に有りて、長さ四五尺、けだし塚墓間の物の、ここに淪落せるなり。
そこから運河に通じる港があったんです。その港の水中に青い石がありまして、長さ1〜2メートルの長ぼそいものでした。もともとは墓石か何かだったのが、ここに沈んだものだといわれておりました。
この石が、
歳久遂為怪。毎至秋間、能自行于河、出必有覆舟之患。
歳久しくして遂に怪を為す。秋間に至るごとによく自ら河に行き、出づれば必ず覆舟の患有り。
長年のうちにとうとう怪奇なことを仕出かすようになった。毎年秋になると港から運河内にひとりでに出て行き、そのたびに舟を転覆させる災害を惹き起こしたのである。
ある年、
有木商泊筏于港口、自其下過、木為撑起尺余、商大驚。
木商の筏を港口に泊す有るに、その下より過ぎて、木ために撑起すること尺余、商大いに驚く。
木材商がイカダを組んで下ってきて、港の入り口あたりに停泊していたことがあった。その時、石はイカダの下を通り抜けて港から出て行こうとし、このためイカダは30センチ以上も持ち上げられ、乗っていた木材商がたいへんびっくりする、ということがあった。
ふつうの舟ならひっくり返されたかも知れないのだが、イカダだったので転覆しないですんだのである。
「びっくりしました」「あぶなかったですなあ」
とまわりの舟のひとと言いあっていると、
外報覆一麦舟。
外より一麦舟を覆うと報ずるあり。
港の外で、ムギを積んだ船が転覆させられた、という報せが入ってきた。
「またあいつのしわざですかなあ」
と話し合っていますと、
少時復自外入、木起如前。
少時、また外より入り、木起すること前の如し。
しばらくしたら、石がまた港外から戻って来て、イカダの下を通ったので、イカダは先刻と同様に持ち上げられ、木材商はまた驚かされたのであった。
このように石のくせに自由に移動していた。そして、
今猶在水中、時為変怪。
今なお水中に在りて、時に変怪を為す。
今でもこの石は水の中にいて、ときおり奇怪な事件を起こしている。
らしいのである。
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明・陸粲「庚己編」巻五より。十六世紀前半に蘇州に住んでいた著者の陸粲さんは別荘を持っていたんですね。
この世ではいろんなところにこの石のような怪物が潜んでいて、舟をひっくり返そうと仕掛けてくるんです。恐ろしいことではありませんか。(なお、このお話は4年ぐらい前に正月早々ご紹介したことがあるんですが、その後一部解釈を変更したところもあるので、再び取り上げたのである。)