肥ったやつはもちろん、あんまり動きのよくないやつの出番は、だんだん無くなっているようである。
東日本震災から七年目の3月11日になりました。連続して考えると毎日毎日同じような生活送ってますが、七年前を思い出すと、いろんなことがずいぶん変わったなあ、とため息つかされます。
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李白は生前から、謫仙人(天上から地上に流謫されてきた仙人)である、とひとにも言われ、自分でも言っていました。
あるとき、
玄宗燕諸学士於便殿。
玄宗、諸学士を便殿において燕す。
「燕」は「宴」と同じ。
玄宗皇帝が、学者文人たちを集めて宮中で宴会を開いた。
宴たけなわのころ、皇帝はまわりと臣下を信頼することについて会話をしていたが、ふと
顧李白曰、朕与天后任人如何。
李白を顧みて曰く、「朕と天后と、人に任すること如何」。
李白の方を見ておっしゃった。
「わしと天上の天帝さまとを比べると、部下を信頼してシゴトを任せる、という点ではどんなところが違うかな」
「そんなこと知るか」
とは言いません。
李白答えて曰く、
天后任人、如小児市瓜、不択香味、唯取其肥大者。
天后の人に任するは、小児の瓜を市(か)うがごとく、香味を択ばず、ただその肥大なるものを取るのみ。
「天帝さまが部下にシゴトを任せるときは、コドモが市場に行って瓜を買うときとおんなじなんです。香がいいとか味がいいとかそういうことはお構いなしで、ただまるまるとでかいやつを選んで任せるんです」
天帝さまはでぶを信頼しているようです。
陛下任人、如淘沙取金、剖石採玉、皆得其精粋。
陛下の人に任するは、沙を淘(よな)ぎて金を取り、石を剖きて玉を採るがごとく、みなその精粋を得るなり。
「陛下が部下にシゴトを任せるときは、砂を掬って水中の網の中で揺らがせて砂金を探し、あるいは石を割って中から玉を取り出すように、よくできたやつを選んで、そいつにやらせるというやり方ですね」
「わはははは」
上大笑曰、学士過有所飾。
上大笑し、曰く、学士過ぎて飾るところ有り、と。
皇帝は大笑いされた上で、
「李学士どのはちょっとうまいこと言いすぎじゃのう」
とおっしゃった。
んだそうです。
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「開元天宝遺事」巻下より(「唐語林」巻三所収)。天上はともかく地上は適材適所だから、肥ったモノにはシゴトが無いのが普通である。