「手ぶらではあるまいな、くっくっく」「めっそうもございませぬ、ふっふっふ」
ついに今日が来ました。月曜日。今日はなんとか生き抜いて帰ってきたが、果たして週末まで根性持つか。
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今年の目標を忘れないように、一昨日(一月三日)の続き。
三日の第一信では馮其盛あてに「辞める辞める」とおっしゃっていた袁中郎さんから、今回は陶石匱という人あて。
病夫竟解官矣、至湖上矣。
病夫ついに解官するや、湖上に至れり。
病弱なわたくしは、ついに宮仕えを辞めて、まずはこの西湖のほとりまでやってまいりました。
ついに辞めたんです。
さて、あなたは大家族でこの西湖のほとりに住んでいる。
君家兄弟幸如約、早過一談。
君が家の兄弟、幸いに約の如く、早に一談を過ごさんとす。
あなたがた御兄弟は、ありがたいことに以前の約束どおり、わたくしとすみやかに懇談しようとのこと。
早速訪問させていただきます。
せっかく訪問させていただくのだ、もちろん手ぶらではありません。
病夫此来、携得有二十斗珠璣、当与君家兄弟共之。
病夫この来や、携え得て二十斗の珠璣(しゅき)有り、君が家の兄弟とこれを共にすべし。
病弱なるわたくしは今回の訪問に当たって、二十箱ばかりの「真珠」を持ってまいりました。あなたがた御兄弟とこれを山分けにしたいと存じます。
楽しみにお待ちください。
―――なんと。袁中郎はこの直前、富裕を以て名高い呉県の知事でありましたから、財宝をたんまり持って帰任してきたのか。
とシロウトが思うように書いておりますが、これは実は二十冊分の詩や文章を書きためたので風雅を解する陶家の兄弟に読んでいただきたい、ということをオモシロおかしく言っているだけですので念のため。
第二信はこれでおしまい。
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明・袁中郎「短信七篇」より。
ということで、袁中郎は第二信ではついに退職して、まずは春のはじめに西湖まで到着。陶石匱とこのあとともに西湖の春を楽しんでおりますので、陶家の兄弟は二十冊分の詩文も楽しく読んでくれたようです。みなさんだったら風雅よりヤマブキ色のお菓子の方がお好きでしょうから、ガッカリだったかも知れませんケド。
袁中郎「短信七篇」に興味を持たれた方がいたら、だらだらと第三信をお待ちください。