さてですなあ、慣例によりますと・・・と落ち着いて更新しようかと思いましたが、まだ水曜日。週末まであと二日もある。耐えられないので、短くやります。
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春秋の時代、狐丘丈人という賢者がおられたのだそうだ。
この賢者が、楚の宰相であった孫叔敖(そんしゅく・ごう)に語りかけたそうである。(孫叔敖についてはこちら参照→「天下三危」)
三利必有三患。子知之乎。
三利に必ず三患あり。子、これを知れるや。
三つのいいことには、必ず三つのイヤなことが引っついて来ますぞ。あんたはそのことを知っておるかな?
孫叔敖曰く、
「知りません。賢者よ、お教えください」
そこで賢者説いて曰く、
爵高者人妬之。官大者主悪之。禄厚者怨帰之。
爵の高き者は人これを妬む。官の大なる者は主これを悪む。禄の厚き者は怨みこれに帰す。
身分の高いひとは、他人からねたまれるものじゃ。
権限の大きなひとは、雇い主からにくまれるようになるものじゃ。
財産の多いひとは、ひとびとの怨みつらみが集まってくるものじゃ。
これを「三利三患」というのである―――と。
なるほどなー。
ふつうのひとなら「勉強になりましたー」とありがたく聴いて、「それでは」とそれ以上議論にならないようにして帰ってくるところですが、孫叔敖は反論した。
不然。
しからず。
「そんなことはございますまい」
と言ったのだ。
吾爵益高、吾志益下。吾官益大、吾心益小。吾禄益厚、吾施益博。可以免患。
吾が爵高きを益せば吾が志は下るを益さん。吾が官の大なるを益せば吾が心は小なるを益さん。吾が禄の厚きを益せば吾が施しは博きを益さん。以て患を免るべし。
わたしの身分が高くなればなるほど、目指すところをどんどん低くしていけば如何でしょうか。
わたしの権限が大きくなればなるほど、気持ちの持ち方をどんどん細やかにしていけば如何でしょうか。
わたしの財産が多くなればなるほど、ほどこしをする相手をどんどん増やしていけば如何でしょうか。
これによってイヤなことから免れることができるでしょう。
丈人曰く、
善哉言乎。
善いかな、言や。
よう言うたもんじゃのう。
以上。
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明の鄭瑄の「昨非庵日纂」巻十四より。(これももとは「淮南子」あたりからの引用かな?)
そういえば町では共同募金が始まっております。禄の厚いひとはますます施し博なることが必要カモ知れませんよ。わたし? わたしは募金は慣例により市民球場の樽募金以外は・・・させていただいておりますので・・・。
なお、今日は伊勢神宮(内宮)の御神体遷御の儀なりという。ということは新月の闇の夜なのだ。