明日は週刊文春買おうかな。もしかしたら掘り出し物の記事でも載っているかも。
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順治九年(1652)の六月のある晩、江南の餘姚の町。
ある民家の床下で深夜、イヌの啼く声がする。
「どこかの捨て犬が住み着いたのだろうか」
翌日、主人は床下を調べてみたが、イヌの姿はどこにもない。
しかし、夜になるとまたイヌの声がする。
このようなことが数日続き、今度は昼間にもイヌの声がするようになった。
主人、また床下を調べてみたが、イヌの声はするがその姿はない。よくよく調べていくと、その声は地面の下から聞こえるようである。
そこで、家人を使って床を上げ、イヌの声のする地面を掘ってみた。
掘得一犬。
一犬を掘り得たり。
地中からイヌが一匹掘り出された。
そのイヌ、しばらくその家で飼われていたが、ある日、ふといなくなってしまったという。・・・・
この間、飯屋で昼飯を食っていたら、隣の卓でこの話をしながら、
―――いやあ、不思議なことですなあ、地中からイヌが出てきますとは。
と感嘆している人がいたので、わしはわざと咳払いして、その人に聞こえるように
「ああ、本当に世の中には物を知らないひとがたくさんいて困るものじゃなあ」
と一人ごとを言ってみた。
「按ずるに、晋の元康年間(291〜299)、
呉郡民家、聞地中犬子吠声、掘之得牝牡二犬。
呉郡の民家、地中に犬子の吠声を聞き、これを掘りて牝牡二犬を得たり。
呉の地方の民家で、地面の下から犬の鳴き声を聞こえるので、これを掘ってみたところメス・オス二匹のイヌを見つけた。
ということがすでにあるのである。
「晋書」によれば、この家から相談を受けた占い師が言うに、
此名犀犬。得之家富昌。
これ、犀犬と名づく。これを得れば家富昌(さか)えん。
「これは犀犬(さいけん)というものじゃ。たいへん縁起のよいドウブツで、これを手に入れたとは、おまえさんの家はこれから富み栄えることであろう」
と。
現代にはこのようなすぐれた占い師がいないので、あたら縁起のよいドウブツを手に入れながら逃してしまったわけじゃなあ」
以上、ぶつぶつと一人ごとを言ってみましたが、話し終わったころには隣の卓の客はもう勘定をすませて店を出て行っておりました。
わしはこんなことも知っているのに、どうして、わしに教えを請わないのか、不思議でしようがない。
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清・東軒主人「述異記」巻下の記事より構成。(このこと、こちらでも既に論じたからこのHPの読者には常識の範囲内であろう→22.12.2)