やはりもうだめだ。しかし、月のはじめであるのでガマンして更新します。なお、とうとう作成中に突然電源が落ちるようになってきた。広義の言論弾圧ともいうべき状況になってまいりました。
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さて、嘉慶八年(1803)のこと、浙江の海辺にある顧浦地方のとある民家で、家の裏から用水を引くため穴を掘っていた。
と、地中から、
得二犬、雌雄各一。
二犬、雌雄おのおの一を得たり。
二匹のイヌが出てきたのであった。オスとメス、ひとつがいである。
「なんでこんなものが地中から出てくるのだ?」
と疑問に思いましたが、ふつうのイヌです。
くうん、くうん、と家人の足元になついてまいります。
「とりあえずこれに入れておこう」
置之甕中。
これを甕中に置く。
二匹をカメの中に入れておいた。
口の方の狭まったカメなので、逃げ出すことはできないはず。
「とりあえず作業の方をかたづけてしまおう」
と穴掘りを続けているうち、ふと気づきますと、
失所在。
所在を失えり。
いつのまにか、二匹のイヌはいなくなってしまっていた。
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「実に不思議なこととは思わぬか」
と友人の鄭某がいうのだが、わしには何の不思議もない。
「これこれ、おぬし、モノを知らぬにもほどがあるぞ。
まずは「晋書」を開いてみるがよい。
―――元康年間(291〜299)に婁県の懐瑶というひとの家で、
聞地中有犬声。
地中に犬の声あるを聞く。
地面の下からイヌの声が聞こえた。
そこで、
掘之得犬子。大于常犬、哺之能食。
これを掘りて犬子を得たり。常犬より大にして、これに哺(く)らわすによく食す。
地面を掘ってみたらイヌの、まだ子犬と思われるものが出てきた。普通の子犬よりは大きかった。
「何を食うのであろうか」
と疑いつつ普通のイヌのえさを与えてみるとふつうに食った。
正体がわからぬので、
還置穴中、覆以磨石、越宿失所在。
また穴中に置き、覆うに磨石を以てするに、越宿にして所在を失う。
掘り出した穴の中に戻して、上に磨いた石を置いて蓋をしておいた。しばらく中で鳴き声が聴こえたが、二晩すると聴こえなくなり、蓋をあけてみるとどこに行ったものか姿が見えなくなっていた。
―――というのである。これと同じものでなくてなんであろうか」
「ほう」
鄭は感心したように頷いたので、わしは気をよくして、
「先秦の「尸子」(※)という書には
地中有犬名地狼。
地中に犬あり、名づけて「地狼」という。
大地の中にイヌをれり。その名を「地狼」といふなり。
※「尸子」(しし)は秦の食客であった雑家の尸佼(し・きょう)というひとの著といい、漢書・芸文志によれば二十篇あったとのこと。宋代には散逸し、現在見られるもの(清代も)は清の時代、汪継培というひとが諸書から編纂し直したものである。
と記されており、「夏鼎志」(※※)という書には
掘地得狗名賈。
地を掘りて狗を得、「賈」と名づく。
大地を掘っていてイヌが出てきたならば、それは「賈」(カ)というモノなり。
※※すいません、こちらはどんな書物か不明。按ずるに超古代の「夏」の時代の「鼎」に関する記録というのであろうか。
とある。
蓋前古已有之矣。
けだし前古すでにこれ有るなり。
つまり、古代よりずっとあるものなので、珍しくもなんともなく・・・」
「わかった、わかった、もういい」
鄭はわしの話をさえぎって苦笑いした。どういうことだ。なんで教えてやっているのに苦笑などしているのであろう。けしからんのう。
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「在園叢話」第十四より。
すばらしい。みなさんももっとがんばって、かようなチシキ人とならねばなりませんぞ。わしはもうだめなので、わしのカバネを越えて行ってくだされい。