平成24年2月16日(木)  目次へ  前回に戻る

 

毎日つらいですなあ。

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世界の西のはての地域の南の隅に、「古莽」という國があるのだそうでございます。この地域は極地でございますので、自然の道理が通らない。「古莽國」では陰と陽が交わることがなく、エネルギーが発生しないので人の行動力はきわめて弱い。また、季節のめぐりが無く、寒い季節・暖かい季節の別がない。その國のひとは、物を食べもせず、服も着ていないのだそうでございます。

そして、

其人多眠。

その人、多眠なり。

その國のひとは、よく眠る。

どれぐらい眠るかというに、

五旬一覚。

五旬にして一たび覚む。

五十日に一日しか目を覚まさない。

すばらしい。すばらしい生活ですぞ。夢のユートピア「クッカーニャ國」さえかくやと思わせるばかり。

しかるに、この國のひと、

以夢之所為為実、昼之所見為虚。

夢の為すところを以て実と為し、昼の見るところを虚と為す。

夢で見る方が実世界であり、昼間起きて見ているのは虚構の世界だと思い込んでいるのである。

さればこの國のひとは、もし夢の中でつらい目にあっていたとすると、夢という逃げ場さえ無いことになる。

その國に生まれたとしても、つらいやつはつらいのでございましょう。

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「列子」巻三「周穆王篇」より。

この篇には異国に関するホラ話がわんさか詰まっておりまして、「列子」という書物はまるまる知的な良心のないやつが書いたホラ咄ばかりの本ですが、その中でも最底辺のレベルのホラ咄がこの篇に集まっている、とも申せましょうほどです。人生に疲れたひとが読むといいのだろうさ。

 

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