イランはどうなるのでしょうなあ。確かにわたしは用兵家崩れの人間ですよ。リデル=ハートを通して「孫子」を学んだ時期もあった。
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「用兵の法」について論じた有名な一章です。
高陵勿向、背丘勿逆。
高陵に向かうなかれ、丘を背にして逆(むか)うることなかれ。
高い丘にいる敵に向かって攻めかけてはならぬ。丘を背後にして敵を迎え打ってはならぬ。
佯北勿従。
佯(いつ)わり北(に)ぐるに従うなかれ。
偽って背走する敵を追いかけてはならぬ。
唐・李筌の注にいう、伏兵があるからである。
鋭卒勿攻。
鋭卒は攻むるなかれ。
士気・装備の高い敵を攻撃してはならぬ。
餌兵勿食。
餌兵は食らうなかれ。
おとりに引っかかってはならぬ。
帰師勿遏。
帰師は遏(とど)むるなかれ。
帰ろうとしている敵を留まらせて戦ってはならぬ。
宋・梅堯臣の注にいう、死戦するからである。
囲師必闕。
師を囲むには必ず闕せよ。
敵を囲んだときには、必ず一か所囲みを空けておけ。
窮寇勿迫。
窮寇には迫るなかれ。
追い込まれた敵には攻撃をしかけてはならぬ。
一読していずれも近代国家間戦争の大原則である「殲滅戦」(クラウゼビッツ)に反するわけです。「坂の上の雲」のひとたちとは違うのです。
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「十一家注孫子」巻中・軍争篇より。やっぱり「孫子」を読むなら「十一家注」でなければなあ。
十一家とは、
魏武公・曹操
南朝梁・孟氏
唐・李筌
唐・賈林
唐・杜佑
唐・杜牧
唐・陳暭
宋・王皙
宋・梅堯臣
南宋・張預
の十一人である。
各人の注には個性もあるし、また多く史上の戦績を引いて論じているので、たいへんタメになります。今回は眠いのでここまでですが、最近、海賊島の御伽衆の職を得ました。給金として
「黄金色のまんじゅうをたんまり遣わすぞ、ふほほほ」
と言われております。ので、これからは生活にゆとりができそうですから、半年二十五話ぐらいで講釈してさしあげたい・・・ところですが、聞く耳持たないひとたちに話してもなあ。
ちなみに、「孫子」はクラウゼヴィッツのように国民国家間の近代戦争を論じているわけでは毛頭ありませんが、明確に「敵国」を前提としています。「敵」というのは「適」と同じで、「当方にふさわしい、対等の相手」を表わします。チュウゴク史でいえば、戦国や三国、南北朝、五代、南北宋の時代のように、前近代の、対等の国どうしが争っている時代にぴったりくる用兵書なので、巨大な帝国が内部の反乱や周辺の「まつろわぬ民」を征伐する「帝国戦争」の用兵には、軍事と合わせて徳や合理的制度を以て支配すべき、とする「孟子」や「荀子」の用兵理論の方が適切ですから、使おうとするひとは自分がどちらの戦争をするつもりなのか確認してから使用してくださいね。