眠いよう。寒いよう。
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「京師花子」とはナニモノでしょうか。
明の京師(みやこ)・北京では乞食のことを「花子」といった。彼らは貧者を担当する五城坊司に登録されているだけで一万人をはるかに超える。これが「京師花子」であります。
この「花子」は毎日一銭の銭を支払うことができれば、五城坊司所管の石部屋に宿泊することができる。彼らは厳寒のころには草や藁、あるいは獣の毛を床に敷いて寒さをしのぐのである。
しかるに一銭の支払いのできないものはその恩恵に与ることもできず凍死するしかない。
そこで、餓えと寒さに耐えきれなくなった者は、
至窖乾糞土而処其中、或呑砒一銖。
乾糞土に窖(あなほ)りしてその中に処(お)り、あるいは砒一銖を呑むに至る。
汚物を積み上げて乾かしてある中に穴をあけてそこにもぐりこんだり、砒素を1.5グラムぐらい呑むまでに至るのだ。
砒素を呑むとあたたかくなるのですな。
然至春月、糞砒毒発必死。
しかるに春月に至れば、糞・砒の毒発して必ず死す。
しかし、春になるころには、汚物の毒がしみこんだり、砒素の毒に中って、必ず死ぬのである。
計一年凍死毒死不下数千。
一年の凍死・毒死を計れば数千を下らず。
一年間に凍死するやつ、糞・砒毒で死ぬやつを合わせれば数千人以上である。
が、
丐之多如故也。
丐の多きこと故(もと)の如きなり。
乞食の数はいつの年ももとどおり一万以上いるのである。
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みんなたいへんなんですね。明・謝在杭「五雑組」巻五より。