暑いです。
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昨日は→これから帰ってきたら、途中で
「待て待て。わしの夢をまたまた教えてやるぞ」
とまたまた明の徐文長に呼び止められて、しようがなく話を聞いていたので更新できませんでした。
「今度の夢ではなあ。・・・・・・・・・・
わしは「群山」という山の中に隠棲していた。「群山」は「壁河」という川の東にあり、西ではない。わしの住む洞穴の近くには、韓生という男がこれも洞穴に暮らしていた。
ところが、山の麓にある「群城」という町の役人、「五百」という者がわしに隠棲を止めて町に出てこい、と誘うのだ。
そして、韓生が彼の案内をしてわしのところへやってきた。
随う童子が何かを引きずっていて、これがまるで数人のひとの足音のように聞こえる。
彼らは道を曲がってわしの庵の前まできた。
わしは彼らに言うた。
幸決某。
幸いに某に決す。
「ありがたいことにわたくしに決めてくださりましたか」
一行はうなずいた。
わしは一行のあとに随って歩き始めたが、百歩も行かないうちに、
群山西上一白羊、大可如一驢、而脚高、逐一白大羊。眼並黄金色。
群山西上に一白羊の、大なること一驢のごとかるべくして脚高きありて、一白大羊を逐(お)う。眼、並びに黄金色なり。
「群山」の山頂の西側に巨大な白いヒツジが出現したのだ。このヒツジ、驢馬ほどの大きさがあり、長い足をしていて、別の巨大な白ヒツジを追いかけて、こちらに駆け下りてくる。どちらのヒツジも目は金色であった。
五百はこのヒツジらを見て、
虎来、虎来。
虎来たれり、虎来たれり。
「ト、トラじゃ、トラが出たーーー!」
と大騒ぎして逃げ出したのだが、わしはそれがヒツジだということを知っていた。
わしが逃げずにいると、大ヒツジはわしの方に駆けてきて、
「ああ?」
と叫ぶ間もあろうか、
某為大白羊所鉗項右。
某、大白羊の項右を鉗するところとなる。
巨大な白ヒツジの角が、わしの首を右側から貫いたのだ。
―――たいへんなことになってしまった。
と思った。
しかし、
不傷亦不痛。
傷まず、また痛まず。
まったく血も出ないし、痛くもない。
不思議な感覚であった。
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「だから、それが何だというのですかあ。それは「晩明二十家小品」所収の「記夢其二」(夢を記す、その2)ですよねー」
わしはめんどくさいので逃げ出して、やっと帰ってこれました。徐文長は「待て待て」とわしのあとを追いかけてきていたから、何とか撒けたと思いますがまだそこらの路地をうろついていることでしょう。
もう何が何の象徴だろうかなどと推測することもできません。これはほんとの「夢」です。現実感が全くない。わずかに二匹のヒツジの眼が「黄金色」だというのがナマナマしさを持つぐらい。なお「五百」は固有名詞と見て訳しましたが、「五百人」のひとかも知れません。とにかく合理的に解釈してもしようがないのだ。