平成23年7月2日(土)  目次へ  前回に戻る

 

今日は「笑府」の読解について、すごくエライ方から御教示をいただく。どういうことであったか、少し整理が必要です。整理してからみなさまにも教えてあげますよお。

まだまだ思索も学問も経験も足らぬ。わが道の遠いこと、まことに九万里の彼方まで燕雀の志と翼で行くごとく、尽きることなし、である。

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ところで、今日道を歩いていたら明の徐文長から声をかけられました。

徐文長は名をといい、憤激して女房を殺し、興奮のままに自らのキン○マを鉄槌でつぶした、という過去のあるひとですから、話を聴こうかどうか悩みましたが、勝手に話しかけてくるのでさえぎることもできず聞かされました。

「わしの夢を聴いてくれ。・・・・・・・・・・・・・

深い山に入って行った―――と思ったら、いつの間にか平地に出ていた。真昼間で、道は広く平坦、幅は何十メートルもあるのだが、表面に瓦が敷き詰められているわけではなかった。

ずうっと歩いて行くと、山に突き当たった。山の下に南向きにいくつかの役所らしき建物が並んでおって、辺境守備兵が数十人、ここを護っているのだ。

異鳥獣各三四、羈其左、不知其名。

異なる鳥獣おのおの三・四、その左に羈(つな)がるも、その名を知らず。

おかしな形の鳥と獣、どちらも三、四種類、建物の左側の空き地につながれていたが、なんという鳥獣なのか名前もわからない。

もう少しはっきり見たい―――と思うて、そちらに近づいていったとき・・・・・

署地忽震、幾隕。

署地たちまち震え、ほとんど隕ちんとす。

役所の建っている場所が突然震動しはじめ、建物は崩れ始めたのだ。

「!」

見上げると、北の山の上の方に青い松の木が茂っており、そのすがた、まったく碧い鳥の羽のごとし。

わしはそちらに向かって走った。

―――どこをどう走ったのであろうか、わしは道観(道教のお寺)の門の前に立っていたのだ。

ずっと以前にどこかで見たような気のするお寺であった。

門番がいた。よく顔は見えないのだが、わしにたいへん同情してくれているらしく、お寺のあるじにわしが来たこと、わしをこの寺に留めてやってほしいことを告げてくれた。しかし、寺のあるじの道士は黄色い冠をかぶり布の服を着て、門のところでわしに言うたのだ、

此非汝住処。

これ汝の住む処にあらず。

「ここはおまえの住むところではない。」

一礼して戻ろうとしたら、すう、とその道士は大きくなった。門よりも大きくなる。

そして、帳簿を見ながら、わしの背中に向けて

女名非渭、此哂字是汝名也。

女(なんじ)の名は「渭」(イ)にあらず、この「哂」(シャ)字これ汝の名なり。

「おまえの名前は「渭」ではないのだ、「哂」というのが、おまえの本当の名なのだ」

と言うた。

「?」                                                                                  

わしは振り向いた―――

「おお」

さっきまで立派なお寺と見えたのに、

観亦荒涼甚、守門及主亦並繿縷。

観もまた荒涼甚だしく、守門と主もまた並びに繿縷(らんる)たり。

お寺は荒れ果て、門番もあるじの道士も、どちらもぼろぼろの衣服が残っているだけであった。

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「だ、だったらどうだというのですかあ?それは「晩明二十家小品」に出てくる「記夢其一」(夢を記す、その一)という文章ですよね、ではさよーならー」

わしはイヤになって逃げだした。

「待て待て、次が・・・」

と追いかけてくるのですが、わしは逃げ出して、何とか→これに間に合いました。

ところで、徐文長の夢、たいへん近代的なのを感じていただけましたでしょうか。徐文長の天才、四つぐらいは世紀を超えて、漱石先生「夢十夜」なんかよりさらにゲンダイの香り漂うようではありませんか。たとえそれが腐臭でありましたとしても。

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ただいま満鉄社歌「東より光は来たる」(戦後に東海林太郎が吹き込んだものですが)を聴いております。

――共にす睦み 睦みの歌は

   聴け 崑崙の峰 撼(ゆる)がすがごとく響けるを (詞・山口慎一) 

 

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