清・王阮亭「池北偶談」巻二十より「浄池鳥」
・・・扶風(長安近辺)の太白山は多くの峰から成っているが、その一峰には、
盛夏雪霰不絶、人無能登其巓者。惟六月可上。
盛夏も雪霰絶せず、ひとのその巓によく登る者無し。ただ六月のみ上るべし。
真夏といえども雪舞い、あられが降る寒さ、人間がその頂まで登ることはできぬ。ただ、旧暦の六月の一ヶ月間のみ、ようやく登ることができるだけだ。
この巓に太白神殿があり、つねに厳寒の中にあり、一年のうち十一ヶ月は雪積もるゆえ、鉄の瓦でその屋根を覆ってあった。
神殿の周囲には合わせて五つの池があるが、ここに珍しい鳥がいる。
紅色、大如雀、池有滓穢、則啣去之。名浄池鳥。
紅色にして大いさ雀の如く、池に滓穢あれば、すなわち啣(くら)いてこれを去る。名づけて「浄池鳥」という。
赤い色をしており、大きさはスズメぐらいであるが、池に汚れたものが浮いていると、どこからか飛んできて嘴に咥えて飛び去って行く。だからこの鳥は「池をきれいにする鳥」と呼ばれているのである。
しかしながら、
山奇寒、無林木鳥獣。
山奇寒にして、林木鳥獣無し。
この山はとにかく寒く、樹木もほかの鳥や獣の姿も無い。
そんな中、この鳥が普段どこに暮らしていて、何を摂取して生きているのかは、謎である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんなこと、どうでもいいように思われる。