令和2年9月19日(土)  目次へ  前回に戻る

休みの日の午後などにはイヌさまたちのようにゆっくりとお茶でも楽しみたいものである。だが、明日は出勤だ。

明日は出勤である。ツラいなあ。

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明の時代のこと、朱某という礼部侍郎さまがおられたが、

家載席一車、為公買宅費。

家、席を一車に載せて、公の買宅の費と為さんとす。

その家の者が、敷布団を車一台分仕入れてきて、これを売って、その家族の住宅を買う費用にしようとした。

「これから冬だから、絶対もうかるはず・・・」

と考えたのである。

ところが、

都城宦者阻之、且言必得一刺、以別真偽。

都城の宦者これを阻み、かつ「必ず一刺を得て、以て真偽を別せん」と。

都の城門の係官がその車の入場を許可しない。

そこで、「これは礼部侍郎さまの御用ですぞ」と耳打ちしたところ、係官は

「それなら礼部侍郎さまのお名刺を一枚いただいて、本当かどうかの証拠とさせていただきましょう」

と言うのであった。

そこで家人が朱某に名刺を一枚請うたが、

公弗許。

公許さず。

朱は「ダメですよ」と断った。

「だんなさま、どうしてですか」

「係官の許可も出ないようなものを、なぜわざわざ都の中に入れなければならないんですか?」

「それは、

必入乃得利。

必ず入ればすなわち利を得るなり。

城内に入れば、絶対得をするからですよ」

城内で売る方が高く売れるのだ、という。

「郊外では貧乏人どもしか買い手がつかないのです」

「なるほどなあ・・・。

不得利、又何傷乎。

利を得ざるも、また何か傷(いた)まんや。

人より得をしなかったからといって、うちは何も困ることはないではないですか」

竟止於城外、平価售之。

ついに城外に止どめ、平価にてこれを售れり。

とうとう郊外で荷ほどきをさせ、その場で安い値段で売りさばかせた。

こういう人を「仁人」というのである。

彼はもともと科挙試験の状元(首席合格者)であったが、合格が発表されると

「そうですか」

略無喜色、帰里中、惟徒行。

ほぼ喜色無く、里中に帰るに、ただ徒行せり。

何もうれしそうではなく、家に帰るときも歩いて帰って行った。

当時、

人甚器之。

ひと甚だこれを器とす。

人々は「なかなかの人物じゃ」とウワサしたそうである。

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「玉堂叢語」巻五「方正」より。状元のひとがどれぐらい出世したか調べようとしていて見つけたお話です。いろんなことがわかりますね。役人一族のおカネの儲け方とか、科挙に合格すると騎馬や馬車で帰るものだったようだとか・・・。かしこくなった感じがします。

なお、本日、コロナ下で楽しく読んできた「講談社中国の歴史」シリーズ12巻を読み終えました。4月からだから一か月2冊ぐらい、アマゾンで買ってしまったんです。昔ならこんなに早く読んだらもったいない、と思ってしまうところですが、今はもう時間の方がそんなに遺されていないのだ。

 

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