こんなところ。
更新は肝冷童子やカメ軍師に任せて、わしは放浪中である。それほどニンゲン社会がイヤになったのだ。
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水戸の宍戸というところに稲田姫を祀る小さな社があって、
其辺の崖崩れたるを修めんとするに(鋤に)あたる物あり。何ならんと掘りて見れば、大いなる甕のごとし。
その付近でがけ崩れが起きたので、それを修復する作業をしていたところ、スコップに何やらかちんと当たった。
「なんであろう」
と掘り出して見ると、なにやらでかいカメのようである。
鋤に当たって欠けた部分を取り上げてみると、大きな「歯」であった。周囲には
この甕のごときもの限りも知られず、歯も随いて数あり。官の検(しらべ)を得てこの歯を奉りしが、一枚の重さ三貫五百目なり。
このカメのようなものが無数にあって、歯もそれに対応してたくさんあった。役所が調べに来たので、この歯を差し出したが、一箇で数キログラムぐらいもあった。
いろいろ調べた結果、
彼の甕のごときは龍頭に決す。
そのカメのようなものは「龍の頭」だ、ということに決まった。
なお掘るれば全体顕わるべけれど、益なしとてやみぬ。
さらに掘れば全身が出てくるかも知れなかったが、何の役にも立たないので止めてしまった。
稲田姫を祀れるも、もしくはこの龍の妖を鎮めんがため、八股の蛇(おろち)の故事をおもへるにやと、かしこに仕官せし人かたりぬ。
出雲神話の稲田姫さまを祀ってあるのも、八股のおろちを稲田姫とスサノオノミコトで退治したという神話を考え合わせて、もしかしたらこの龍の妖気を鎮めるためなのかも知れない、と当地のとのさまに仕えていたひとが言ってました。
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本朝・伴蒿溪「閑田耕筆」巻一より。ちょうど今日、放浪の旅すがらにこの稲田神社に寄ったので、引用してみました。恐竜の化石かも知れませんが、甕(カメ)かと思ったら龍の頭、とは、誰が決したのか、そのひとは龍を知っていたのか、興味深い。