令和2年4月3日(金)  目次へ  前回に戻る

竜虎相まみえるの図。

少し暖かくなってきましたね。

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今日はかわいいドウブツのお話でもいたしましょう。

嘉慶庚辰年(1820)五月八日、湖南・洞庭の東山城に変なモノが現れました。

鬚角畢露、凡十三条、観者如堵。

鬚・角、すべて露(あら)われ、およそ十三条、観者、堵の如し。

長いヒゲと角がはっきりと見える細長いドウブツが、全部で十三体(「条」は細長いものを数える数詞)出現し、ウワサを聞いて見物人が集まって、まるで垣のように取り巻いた。

「なんだ、あれは」

「龍ではないか」

だとすると、集まってきたのは、コワいもの見たさにナゴヤドームに詰めかけた人たちのようなものである。

「わいわい」

と言い合っているうちに、

油雲四塞。

油雲四塞す。

真っ黒な雲が四方から湧き上がってきた。

そして、ぽつりと雨が当たりはじめ、あっという間に

大雨如注。

大雨注ぐが如し。

バケツの水をぶちまけたような雨になった。

「うわー」

とひとびとが逃げまどっているうちに、

龍亦不復見矣。

龍また、また見えざりき。

龍もやはり、どこかに消え去ってしまった。

・・・そのウワサがちょうど都に届いて、「いったいなんの前触れだろうね」と人々が話していた五月二十七日、

京師雷雨夜作。

京師にて雷雨夜に作(おこ)る。

都・北京では深夜に雷雨になった。

激しい稲光と雷鳴の中、

どかん。

カミナリが宮中に落ちた。この落雷によって、

暢春園虎圏之虎、忽逃其一。

暢春園の虎圏の虎、忽ち其の一を逃す。

内庭の暢春園にあったトラの檻から、一頭が逃げ出したのだ。

六甲おろしに颯爽と?

次早有中貴人三在前湖看荷花。

次早、中貴人三、前湖に在りて、荷花を看る有り。

次の日の朝、そんなこととは知らぬ三人の宦官が、庭園中の前湖のほとりで、おりしも咲いていたハスの花を観賞していた。

すると、ごろごろと不気味な鳴き声が聞こえ、

卒遇之。虎食其一、両人躍入水中獲免。

ついにこれに遇う。虎、その一を食らい、両人水中に躍り入りて免かるるを獲たり。

突然、トラが目の前に現れたのである。トラはそのうちの一人にとびかかり、首筋を噛んで一命を奪うと、はらわたや四肢を食い始めた。のこりの二人は池の中に飛び込んで、なんとか逃れることができた。

この報せを受けて、宮廷もペキン市街もパニックになったが、

越五日、奉旨命三額駙殺虎。

五日を越えて、奉旨して三額駙に命じて虎を殺せり。

「額駙」(がくふ)は、清代に、皇室の女性・公主を娶った男性に対して贈られた称号。

五日後、皇帝の命を受けた三人の公主さまの御夫君たちが、トラを討ち取った。

湖南の方は、五月八日の大雨の後、

至六月、七月、八月皆無雨、高田乾涸、農民苦之。

六月、七月、八月に至るもみな雨無く、高田乾涸して、農民これに苦しめり。

六月、七月、八月になっても全く雨が降らず、少し高いところにある田には水が涸れて、百姓どもは大いに苦しんだのであった。

八月、嘉慶帝が崩御された。

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「履園叢話」第十四「祥異」より。龍とトラと皇帝には直接の関係はないのに、むかしの人にとってはすべて何らかの意味ある一つながりのことと観念されて、「祥」(めでたいことや災いごとの「きざし」「前兆」)とされたのです。

タイガースの選手のコロナ感染が、タニマチ問題を表ざたにすることなって、まずい。これは「不祥事」です。コロナが無ければ表に出てこなかったことなんだろうけど、感染よりおそらくこちらの方が問題でかいぞ。

 

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