ラーメン美味い。
昨日美味かったので今日はマズいものを食うことにしたが、量的には昨日と同じかそれ以上食ってしまいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食べ物を手に入れるにはいろんな人が働いているんです。
昨日の続きですが、清の賡音(こう・おん)さまは、二十何回も乾隆帝のシカ狩りに随従したという経歴を持っておられる。
「それで、シカ狩りの前日になると何をするのですか?」
前一日先遣人聴鹿声。
前一日、まず人を遣わして鹿の声を聴かしむ。
「前日には、まず先遣の担当者を狩場に派遣して、「シカの声を聞く」に行かせる。
シカが集まっていなければ狩りはできません。「聴鹿声」(シカの声を聞く)という行事は、単にシカがいるかどうか確認するために声を聞きに行くのではないのです。
人披鹿皮、載鹿首、肖鹿之形、口吹角、肖鹿之声、引鹿自至。因易捕獲耳。
人、鹿皮を披(き)、鹿首を載せ、鹿の形に肖(に)せ、口に角を吹いて鹿の声に肖せて、鹿を引きて自ら至らしむ。因りて捕獲を易くするのみ。
派遣されるヤツは、シカの皮を着て、シカのアタマ(の剥製)を頭の上に載せ、シカの姿を真似るのです。口には角笛をくわえて吹き、シカの鳴き声を真似るのです。このニセモノのシカにつられて、シカたちに自分から狩場に集まって来させる。こうやってシカをたやすく狩れるようにするのですぞ。
先遣されるやつはたいへんな技量の持ち主でなければならないのじゃ。
これらの準備の上、
上哨鹿必於天未明時、親出囲場一二十里外、扈従遴選巴図魯二十余員。
上の哨鹿するは必ず天の未明時において、親しく囲場一二十里の外なるに出で、遴選の巴図魯(ばーとる)二十余員を扈従す。
「遴」(りん)も「選」(せん)も「選ぶ」です。「巴図魯」(ばとる)は満州語の「勇者」、貴族の称号でもあります。
皇帝がシカ狩りに出られるときは、必ず夜明け前に、御自ら(離宮から)10〜20里(≒5〜10q)離れた狩場に、選び抜かれた満州騎士二十数騎を引き連れて、出猟されるのじゃ。
その二十余人にわしは選ばれておったわけですなあ。
狩場に着いて、集まっていたシカを倒すと、皇帝以下そのシカの周りに集まる。まだ息をしておるのを押さえつけて、騎士長が腰に提げていた銀のキセルのような管を取り出し、
以銀管刺臍、吸飲其血焉。
銀管を以て臍に刺し、その血を吸飲す。
銀の管をシカのへそのところにぶすりと刺して、そこから温かな血を、皇帝以下かわるがわる吸い飲むのじゃ。
ああ、その美味であったことよ!」
賡老人は、その時を思い出したのであろう、遠い目で頬に至福の微笑みを浮かべた。
「そ、そうだったんですか」
さすがは満州貴族、野生の精神をお持ちであったようです。
なお、賡音さまとはいろいろお付き合いがあったのですが、よく次のようなことをおっしゃっておられた。
与人共事、議論当婉転商量、与人留地歩、不可恃気直争。恐致触忤人忌。
人と事を共にするには、議論まさに婉転して商量し、人に留地歩を与うべく、気を恃みて直争すべからず。恐るらくは人の忌むに触忤するを致さん。
「誰かと一緒にシゴトをするときは、話し合うときにうまく柔らかく気を使って、相手を追い込まず、「動きしろ」を与えてやらねばなりませんぞ。憤激したりして正面から争ってしまっては、相手の譲れないところに触れてしまうかも知れませんからな」
「なるほど」
わたしは言いました、
与人留地歩者、正所以自留地歩也。
人に留地歩を与うるは、まさに以て自ら地歩を留むるところならん。
「相手に「動きしろ」を与えるというのは、実は自分の「動きしろ」を作っておく、ということなんですね」
また、わたしがいろいろ心配事があって困っていたとき、こうおっしゃってくれた。
君子道其常。若変、何可計料哉。雖過憂慮奚益。豈有自己立脚処、尚信不穏耶。
君子はその常を道とす。変ずるがごときは、何ぞ計料すべけんや。憂慮に過ぐるといえどもなんぞ益せん。あに自己の立脚するところ有りて、なお不穏を信ぜんや。
「おまえさん、常道を行けばいいのじゃぞ。変わったことが起こるのではないかなどと心配する必要はない。心配し過ぎても何の益もありません。自分の足でしっかり立っているのに、どうして何か悪いことが起こるなどと思い込まねばならないのじゃ?」
「そ、そうですよね・・・」
語皆可誦。
語みな誦すべし。
どちらも、口ずさむに足るコトバである。
少なくとも、わたしは今も、彼のコトバに導かれている。
・・・・・・・・・・・・・・・
清・趙慎畛「楡巣雑識」下より。確かに、寒い夜明けにシカの生き血は美味いかも知れません。あまり食べたく思いませんけど。なお、著者の趙慎畛さんは「嘉言」(いいことば)を記録するのが大好きで、いろんな人に聞いて歩いていたみたいです。
おいらは「文明人」だからレアーよりウェルダン派でちゅ。コドモだし。・・・ということで、こいつらは五人囃子でしたー。