令和2年2月29日(土)  目次へ  前回に戻る

ごはん美味い。

今日は昼も晩も美味いもの食った。昼はかごしまのぶたしゃぶ、晩飯は荻窪ですごい寿司食った。いろんなものが食べられてシアワセな世の中です。

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食べ物が自由に入らない地域もあるんです。

清の乾隆年間に、総督に該当する「総憲」の職に至った賡音(こう・おん)という人がいた。旗人の出身で、延安や黒竜江などの辺地に赴任して赫赫たる治績を持つ名官僚ですが、現在(現代日本ではありません。十九世紀の初めごろ)は引退され、

年七十五、耳目聡明、精神強健。

年七十五、耳目聡明にして精神強健なり。

七十五歳になられるが、視力も聴力も衰えなく、精神も強く健やかであられる。

この人からお話を聞きました。

「いやいやわしには何の取柄もござらんよ。ただ、

生平最能耐苦。嘗居俄羅斯辺界四年、未嘗着大米、醢醤等物。

生平最も苦に耐えるを能くす。嘗て俄羅斯(うらす)辺界に居ること四年、いまだかつて大米、醢醤等の物着せざりき。

生まれつきどうやら苦しい生活をガマンすることは得意だったんですな。かつて、黒竜江上流のロシアとの国境地域に赴任して四年を過ごしましたが、そこには一度としてコメや漬物・塩辛の類が届いたことがございませんでしたなあ」

「何を食べておられたんですか」

其地牛羊肉外、蔬菜不可得。内地人携種藝植、餽遣上官、即同珍品。

其の地、牛羊の肉の外、蔬菜得べからず。内地人種を携え藝植して、上官に餽遣するに、即ち珍品と同じきなり。

そこでは、ウシ・ヒツジの肉以外には、野菜は全く手に入りませんでした。中原から赴任してきた役人には、野菜の種を持ってきて、これを植えて育て、上司への贈り物にしている者がおりましたが、そうすると、珍宝の類を贈るのと同じ扱いを受けましたなあ。

コメはおにぎりにしても美味い。

しかし、

其地四月後醒氷、七月即降霜。蔬菜生意、不過六七十日耳。

其の地は四月後に醒氷し、七月に即ち降霜す。蔬菜の生意、六七十日に過ぎざるのみ。

その地は四月以降(太陽暦の五月末)にやっと氷が融け、七月(八月半ば)にはもう霜が降り出すという気候ですから、野菜類が育つのは60〜70日に過ぎません。

その間に育てて贈らないといけませんから、成功するのは一握りでしたし、種を取って翌年まで持ち越すこともできませんでしたから、赴任の年限りしか育てられず、赴任してから何年か経って異動先が気になるころには何の役にも立ちませんでしたわい、わははは」

賡音どのといえば、

属官饋遺皆峻却之。

属官の饋遺みなこれを峻却す。

部下からの付け届けはすべて厳しくこれを送り返した。

という「有守」(守るところがある)の人として有名で、乾隆帝の時に、辺境の地の官員二百十七人について不正が無いか取り調べられた際、たった一人問題が無く、帝の覚え大いに目出度かった、というひとなのである。

ついでなんで訊いてみます。

「役人時代のことで、付け届けはお受け取りにはならなかったと聞きますが、ご自慢とか役得とか、われらに教えていただけるようなことはございませんでしたか。ぐふふふ」

「そうですなあ、わしの自慢は、

嘗随秋獮囲廿余次。

嘗て秋獮(しゅうせん)の囲みに随うこと廿余次なり。

皇帝陛下の秋の狩りにご一緒したことが、二十回以上あることですかな」

袖の下のことではないようです。

「あんたは「木蘭」(むーらん)というコトバをご存知かな? 花の名前の方ではございませんぞ。

木蘭者、清語哨鹿、囲場総名也。

木蘭なるものは、清語の「哨鹿・囲場」の総名なり。

「もくらん」というのは、満州語で、「シカを監視する」「囲い込み猟をする」ということ全体を指すコトバじゃ。

凡鹿至霜降前孳息最繁。

およそ鹿は霜降の前に至るに、孳息して最も繁なり。

シカというドウブツは、だいたい霜が降る直前の(晩秋の)時期になると、コドモを産み、最も繁殖するものなんじゃよ。

この時期になりますと、皇帝が鹿狩りに出かけますのじゃが、その前日には・・・」

「その前日には何を?」

「ふふふ、アレをしますのでなあ・・・」

食べ物とは関係なくなってきましたが、もしかしたらオモシロいかも知れませんので、明日も賡老人のお話を聞きます。(なお、興味あるひとは(来週前半までですが)こちらへ行ってみよう。清露国境画定についても資料が見られますよ)

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清・趙慎畛「楡巣雑識」巻下より。今日はまだ二月でした。そうか、オリンピックや大統領選挙のある年だからか。総理から国民への呼びかけもあって大変な状況になってきていますが、食糧生産や流通や外食産業のみなさんがしっかり働いてくれているので、今日も腹いっぱいで暮らせました。

もちろんこれも美味い。とにかく炭水化物は美味い。それにしてもこいつらは何者であろうか。あと二人いるんですが・・・。

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