令和2年2月12日(水)  目次へ  前回に戻る

←ひよこ、ねずみ、ねこ、くま、さるなどの有能すぎるほどのドウブツたちを描いたすばらしい名画であるが、挿入できないので仕方ないなあ。

なんだか暖かくなってきたぞ。

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春が近づき、なんとなくうれしなってきたので、説教するぞ。

今有五錐。

今、五錐(すい)有り。

ここに五本の錐(キリ)があるとする。

此其銛、銛者必先挫。

此れ、それ銛(せん)なれども、銛なるもの必ずまず挫(くじ)かる。

どれもすべてその先は鋭く尖っている。中でも一番鋭いものが、必ず最初に使われて、最初に先がつぶれてしまうだろう。

有五刀。

五刀有り。

今度は五振りの小刀があったとしよう。

此其錯、錯者必先靡。

此れ、それ錯(さく)なれども、錯なるもの必ずまず靡(び)せらる。

どれもすべて磨かれてよく切れる。中でも一番磨かれているものが、必ず最初に使われて、最初に刃こぼれしてしまうだろう。

同じ理由で、

甘井近竭、招木近伐、霊亀近灼、神蛇近暴。

甘井(かんせい)竭(つく)るに近く、招木伐らるるに近く、霊亀灼かるるに近く、神蛇暴(さら)さるるに近し。

美味しい水を出す井戸ほど、尽きてしまいやすい。

高くそびえた木ほど(材木として良質で)、伐採されてしまいやすい。

大きく霊性がある(と思われる)カメほど(占いの精度が高いと考えられるので)、殺されて甲羅を炙られてしまいやすい。

神秘的な力がある(と思われる)ヘビほど(雨を呼ぶ力が強いと思われるので)、雨乞いの祭礼の際に日干しにされていけにえにされてしまいやすい。

のである。

さらに同じわけで、

比干之殪、其抗也。孟賁之殺、其勇也。西施之沈、其美也。呉起之裂、其事也。

比干(ひかん)の殪(ころ)さるるは、それ抗なるがためなり。孟賁(もうほん)の殺さるるは、それ勇なるがためなり。西施(せいし)の沈めらるるは、それ美なるがためなり。呉起の裂かるるは、それ事なるがためなり。

〇殷の紂王に仕えた比干(ひかん)が、生きながら心臓を抉り取られて誅殺されたのは、彼が剛直な性格の持ち主であったためである。

〇秦の武王に仕えた孟賁(もうほん)が、彼に力比べを挑んで鼎を持ち上げようとした武王の背骨が折れて死んだため、その責任を問われて一族誅殺されたのは、彼が勇力の持ち主であったからである。

〇越の謀臣・范蠡から呉王夫差に贈られ、呉王を骨抜きにした美女・西施が、呉王を敗った後、越王句践が見初めて寵愛しようとしたので、国を乱すもとになると范蠡によって水に沈めて殺されたのは、彼女が美貌の持ち主だったからである。

〇魯、魏、楚などの各国に仕えて軍事と内政の改革を進めた呉起が、楚悼王の死後反対派によって殺され、八つ裂きにされたのは、彼が有能で多くの仕事をしたためである。

彼人者、寡不死其所長。

かの人なるものは、その長ずるところに死せざるは寡(すくな)し。

彼らを含む人間というものは、その長所のために死ぬことが多いのである。

故曰太盛難守也。

故に曰く、「太盛は守り難し」と。

このことから、「最も盛んなるものは、守るのが難しい」と言われるのじゃ。

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「墨子」親士第一より。やっぱり優秀だったり有能だったりするとヤバいんです。今日は平日だったんで何とか会社に出勤しましたが、居眠りしたり下を向いたりして過ごし何とか一日生き延びることができたのだ。

 

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