「正月早々三人のおばけが来たでちゅー。縁起悪いでちゅー」「いやいや、三人の〇〇は大事にするといいことあるカモだぜ」「ばけー」「ばけー」
肝冷斎族のおとなはみんな「ああ、おしまいだー」「ぎぎー、年が明けたもうダメだー」「あううー」などのうめき声とともに、新年になったらクモの子を散らすようにいなくなってちまいまちたよ。しかたがないので、おいら臀冷童子が更新をちまちゅ。でも、コドモなのにお年玉もらっていないので、今日一日だけしかいたちません。
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河北・滄州の城壁の外に酒楼(高級酒場)がございました。
背城面河、列屋而居。
城を背にして河に面し、屋を列ねて居れり。
城壁の方を背にして、滄水の流れに方に向けて店を構え、いくつもの棟を連ねて商売をしていた。
明末の崇禎年間(1628〜44)のこと、
有三老人至楼上劇飲、不与直。
三老人の楼上に至りて劇飲し、直を与えざることあり。
あるとき、三人の老人がこの酒楼にやってきて、はげしく飲酒したのですが、代金を払わずに帰って行った。
飲み逃げです、ところがこいつら、なんということでしょうか、
次日復来酔。
次日また来たりて酔う。
次の日もまた来て、酔っぱらい出した。
しかし、
酒家不問也。
酒家問わざるなり。
酒場の主人は何の請求もしなかった。
三老復酔、臨行以余酒灑欄干外河中。
三老また酔い、行くに臨んで余酒を以て欄干外の河中に灑ぐ。
三人の老人は今夜もしたたかに酔い、引き上げる時に(おカネは払わず)残ったお酒を楼の欄干から、外の河の中に注いでしまった。
すると、
水色変、以之醪酒、味芳冽。僅数武地耳、過此南北水皆不可。
水色変じ、これを以て酒を醪するに、味芳冽なり。わずかに数武の地のみにして、これを過ぎれば南北の水みな不可なり。
そこのところだけ河の水が変色してしまった。その水を使ってお酒を醸してみたところ、その味かんばしく、きりりとしたすばらしい酒ができたのである。水の色が変わっている部分はわずかに数歩ぐらいの間だけで、そこ以外、南側の水も北側の水も、そんな味は出ないのだ。
・・・以上は、(飲み逃げの上に食品ロスですから、ゲンダイでは許されませんが)わたし(←おいら臀冷童子ではなく、清のひと阮癸生でちゅよ)が京師(ペキン)にいたとき、滄州出身の同僚・劉紫庭が熱を籠めて話してくれたことである。
紫庭歳致滄酒数甕、非市中物可同日語也。
紫庭歳に滄酒数甕を致すに、市中の物の同日に語るべきにあらざるなり。
劉紫庭は毎年、(その水で醸したのであろう)滄州のお酒を数カメ取り寄せて贈ってくれたが、これは(すばらしく、)他の店で「滄州酒」といって売っているものといっしょくたにできるようなものではなかった。
紫庭の好意には今も感謝している。
清初のころ、王漁洋先生が謝方山から年の暮れに郷里のお酒を贈られたとき、
恰是陵州酒船到、 あたかもこれ陵州の酒船到れり、
不愁風雪厭屠蘇。 風雪も愁えず、屠蘇に厭く。
ちょうどこんなときに(おまえさんからの贈り物の)広陵の銘酒を積んだ船が到着した。
(北京の冬は厳寒で有名であるが)寒風や吹雪ももう心配しないでいい。正月の酒は十分あるのだから。
というようなキモチである。
これは、漁洋先生の晩年の詩であるが、
頗得酒中三昧、風致猶楚楚也。
頗る酒中三昧を得、風致なお楚楚たり。
すこぶる酒を愛する心に満たされ、風情もほんとにあざやかである。
ところで、「屠蘇」は今ではお正月に飲む薬酒のことから、さらにはお正月のお酒を指すようになっておりますが、
酒可名酴酥、未可為屠蘇。
酒は「酴酥」と名づくべきも、いまだ「屠蘇」は為すべからず。
お酒のことは「酴酥」(と・そ)とはいうべきだが、「屠蘇」(と・そ)とはすべきでない。
「酴」(と)は「こうじ」または「どぶろく」をいい、「酥」(そ)はミルク類のこと。薬酒の呼び名としてはこちらが正統である。「屠蘇」というのは、もとは「屠」にも「蘇」にも「广」(げん・まだれ)がついていて、平屋の建物を指す語であった。
自孫思邈居屠蘇醪酒、乃有屠蘇酒之名。後人去酒字、竟呼為屠蘇、未可為訓。
孫思邈の屠蘇に居りて酒を醪せしより、すなわち屠蘇酒の名有り。後人「酒」字を去りて、ついに呼びて「屠蘇」と為すも、いまだ訓を為すべからず。
唐初の博物医学者(兼道士)の孫思邈(そん・しばく)が、平屋(「屠蘇」)にいて薬用酒を醸したことからこれを「屠蘇酒」と呼んだのだが、後のひとはここから「酒」の字を取り去って、ついに「屠蘇」とだけ呼ぶようになったので、どうしても文字の意味は通じない。
のだそうでございます。・・・じゃなくて、コドモなので
のだそうでございまっちゅ。
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「茶余客話」巻二十より。正月でめでたいので酒が飲めるぞの正月になりまちた。コドモなのでお酒飲みませんが、飲む人は適時適切に飲んでくだちゃいね。
明日までにお年玉もらえるかなー。