物事を処理するのにより混乱させてしまってはならんでぶー。それぐらいなら何もしないのがよいのでぶー。
岡本全勝さんのHPでまた紹介してもらったみたいです。ありがとうございます。先代、先々代の肝冷斎も隠棲した洞穴の中や無人島などでよろこんでいることでしょう。
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清のひと江封申の「四忌銘」(四つのやってはいけないことを彫りつけたもの)をご紹介します。
著書忌早。 書を著すには早きを忌む。
処事忌擾。 事を処するには擾(みだ)すを忌む。
立朝忌巧。 朝に立ちては巧なるを忌む。
居室忌好。 居室は好(よ)きを忌む。
著書するのは早いうちにしてはいけない。(自分の学説が固まり切らないうちに書物にしてしまうと、後で撤回できない。)
物事を処理するときには、騒いで混乱させてしまってはいけない。(そういうひとが多いんです。)
朝廷(とか会社とか)で仕事をするときは、巧妙にやるのはいけない。(たとえ迂闊といわれても、着実にやること。)
自分の暮らす部屋は華美であってはいけない。(それよりはこざっぱりとしたのがよろしい。)
うーん、なるほど。
旨哉、斯言。
旨いかな、この言。
実に味わいのあるいいコトバではないか。
人生のいろいろなことを経験した者でないと言えないコトバですなあ。
江封申のこれは何に彫りつけた銘であるかわかりませんが、座の右か左に置いて常に目にするモノに彫りつけたものでしょう。
わしもいろんなものに銘を彫ってみた。
知其白、 その白きを知り、
守其黒。 その黒きを守れ。
便便于腹了了胸、 腹に便便とし、胸には了了、
傍観不若爾能黙。 傍らより観るに若かず、爾よく黙せよ。
白いモノは知っておき(はっきりとしていることは知識に加え)、
黒いモノは守っておく(はっきりとしないことは大事に抱えておく)。
(それらで)おなかの中がいっぱいになれば、心の中には目算ができるだろう。
それでも傍観する者にはかないっこないのだ。おまえさん、今しばらく黙っていておくれ。
これは碁の道具を入れる箱に刻んだもの。
甜郷酔郷温柔郷、 甜郷、酔郷、温柔郷、
三者之夢孰短長。 三者の夢、いずれか短長ぞ。
仙人与我炊黄粱。 仙人我とともに黄梁を炊(か)しがん。
眠りの国、酔いの国、そして暖かい柔らかいもの(女性のことです)の国・・・
三つの国の中で、いちばん長くみていられる夢はどれだろう。(眠りの国の夢に決まっています。)
なにしろ仙人とわしは、邯鄲の近くで黄梁を炊いている間に、一生分の夢を見たほどなのだから。(←「邯鄲の夢」のお話を踏まえているんですぞ)
これは枕に彫りました(みなさんの使っているような枕でなくて、わしらのは陶製とか木製とかで堅いんじゃよ)。
ほかにもそろばんや硯やアヘンを吸うキセル、筆置き、茶たく、酒壺・・・いろんなものに彫ってみた。部屋中、銘だらけになったのである。
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「両般秋雨盦随筆」巻五より。間違っても「面従腹背」は無いようです。それは「座右銘」ではなくて「モットー」だというならわからないでもないのですが。