冷夏でシリコダマの集まりが悪くコロポックルに突っつかれるなど、思い通りに行かないことも多いががんばろう。なお右上のネコは「猫又」なので尻尾が九本に分かれているのである。
夏休み前ですが、明日シゴトがあって出勤なんでがっかりです。弾圧だ。
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西河先生・毛奇齢は明の天啓三年(1623)、浙江・蕭山の生まれ、明末の乱を避けて山中に身を隠し、さらには人を殺めて名を替えて放浪していた、という経歴の持ち主ですが、清朝に入ってその学識を認められて、康熙十八年(1679)に翰林院検討、明史編修となる。後、病を得て郷里に帰り、子弟の教育と儒学古典に関する厖大な著述を行って、康熙五十五年(1716)に卒した。その博学と実証主義的な古典研究を高く評価される一方、同時代からも後世からも、自らを恃む気持ちの強さと道徳的な問題点を指摘されているひとなのですが、
其夫人陳氏以先生有妾曼殊、心嘗妬恨、輒罵于諸弟子之前曰、君等以毛大可爲博学耶。渠作七言八句、亦須獺祭乃成。
その夫人陳氏、先生の妾・曼殊有るを以て、心に嘗(つね)に妬み恨み、すなわち諸弟子の前に罵りて曰く、「君ら毛大可を以て博学と為すや。渠(かれ)七言八句を作る、また獺祭を用いてすなわち成る」と。
奥さまの陳氏は、先生に若い愛人・曼殊がいることをいつも嫉妬して恨んでいたので、先生が弟子たちに講義を行っているところに現われて、
「あなたたちは、この毛大可(大可は先生の字)が博識の学者だと思っているのかしらね。このひとが七言八句の律詩(などの詩文)を作る時には、まるでカワウソのようにいろんな資料を並べて作っているのよ(。決していろんなことを覚えているわけではなく、資料だよりなのよ)」
と悪態をついた。
カワウソのオスは精力が強くて複数のメスと同時につがいになるので知られているそうなんです。そのことと、カワウソが獲物の魚を岸辺に並べて祖先を祀っているような姿を「獺祭」(だっさい)といいますが、先生が著述をするとき、いろんな資料を座の周りに並べておいてから書き始めることにしていたのがその「獺祭」に似ている、ということとを引っ掛けて、要するに先生の好色を皮肉ったわけです。
「こいつはエロ親父なのよ!」
というわけだ。
これに対し、先生は、俯いて困ってしまっている弟子たちに対し、
凡動筆一次、展巻一回、則典故終身不忘、日積月累、自然博洽。後生小子、幸仿行之。婦言勿聴也。
およそ筆を動かすこと一次、巻を展(の)ぶること一回、すなわち典故終身忘れざれば、日に積み月に累(かさ)ね、自然に博く洽(あまね)し。後生の小子、これを仿(なら)い行えば幸いなり。婦言聴くなかれ。
「筆を動かして一回書き写す。書巻を広げて一回確認する。こうして一覧した典故を一生忘れないようにすれば、一日・一か月と積み重ねて、自然に博く遍く知識ができる。(これがわしのやり方じゃ。)後から生まれた諸君が、このわしのやり方を真似て実行すれば学問が進み豊かな人生が送れることであろう。いずれにせよ、女の言うことに耳を傾けてはならんぞ」
と教えたのであった。
ああ、すばらしいなあ。
また、それより以前には、
僦居矮屋三間、左図右史、兼住夫人、中為会客之所、先生構想詩文、手不停輟。質問之士、環坐于旁、随問随答、井井不誤。夫人室中詈罵、先生復還詬之。
僦(か)りて矮屋三間に居るに、図を左にし史を右にし、兼ねて夫人住し、中は会客の所と為して、先生詩文を構想して手を停輟せず。質問の士、旁らに環坐し、随いて問い随いて答え、井井(せいせい)誤まらず。夫人室中に詈罵(りば)し、先生またこれに還詬す。
「井井」(せいせい)は、井戸枠のように正しくおさまる、整然としている、という意味です。
柱の間が三間しかない狭い家を借りていたとき、左には図面を広げ、右には歴史書を積み上げ、それに奥さまがおられた。真ん中の部屋がお客との面会室で、先生はここにいて詩や文章をすごいスピードで考えて、手を止めることがない。先生の周りを取り囲んだ客人たちは、次から次へと古典についての質問をする。先生はそれに次から次へと整然と回答して、少しも誤まることがない。そして、奥さまは隣の部屋から先生に罵詈雑言を浴びせかけ、先生はこれに対して一一反論してやりこめる。
という状況であったという。
「詬」(こう)は「はずかしめる」と訓じる文字です。単に言い返すだけでなく、やりこめて相手に悔しい思いをさせるという意味になるので、このきつい奧さんに対しても、そこまでやれたのです。
蓋五官併用者。
けだし、五官、併せ用うる者なり。
このときの先生こそ、視力・聴力・嗅覚・味覚・触覚、あらゆる人間の機能を同時に働かせる、という偉業を為していたのである。
すごいなあ。
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清・梁紹壬「両般秋雨盦随筆」巻二より。このように弾圧を跳ね返した偉大なひともいたのだ。我々もがんばろう。がんばってこんなところも行ってみた。