また文人画が発見された。「李白把酒問月図」であろう。青天月ありてこのかた幾時ぞ、というアレです。われいまさかずきをあげて・・・と、解説しはじめるとみんな「それで?そのことを聞くと何か役に立つの?」だからなあ。現世のみなさんとの付き合い方は、考え直さなければなあ・・・。
おいら肝冷童子でちゅ。肝冷斎から、「もうPCかプロバイダーか知らんけど容量が足らなくなったみたいで、もうおしまいじゃー!」という連絡が来たので洞窟を覗きに来たのですが、手遅れでした。壁に刻んだメモだけを遺して、もう肝冷斎の影も形もありません。冬眠していたドウブツたちもおらず、洞窟の中はコウモリやメナシコオロギなどが蠢いているばかりであった・・・(あ、いけね、コドモのふりしなきゃ)のでちゅ。
壁に遺された肝冷斎のメモを読んでみましょう。
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元の文宗(在位1328〜32)の時代のこと、北庭王・阿憐帖木児(アレンジャムール)さまのもとに、
一日、有以馬鞭献王。
一日、馬鞭を以て王に献ずる有り。
ある日、馬のムチを献上品としてお目通りに来た者がございました。
このムチを手に取ってみるに、
制作精最、王見而喜之。
制作精最にして、王見てこれを喜べり。
実によくできており、最高の仕上がりである。王は見て、たいへんにおよろこびになられた。
「これをわしにくれるというのか」
「はい。お気に召していただきましたでしょうかな、ふっふっふ」
鞭主進云、此鞭之内、更有物蔵其中。
鞭主進みて云うに、「この鞭の内、さらに物のその中に蔵する有り」と。
ムチを献上してきたものが進み出て云うには、
「このムチには、実はその中に、さらに別のものが仕込まれているのでございますが、お分かりになりますかな?」
「なんじゃと」
王はムチをいじくりまわしてみたが、よくわからない。
「うーむ、何が仕込まれているのじゃ?」
「これ、こうでございます」
抜靶取之、則一鉄筒在焉。
靶(ハ)を抜きてこれを取れば、すなわち一鉄筒在りぬ。
「靶」(ハ)は「馬のたづな」を指す文字ですが、ここではムチの根元の手で持つ「柄」の部分のこと。
その人が手に取って、柄のところを引き抜くと、そこには鉄の筒が隠されていた。
「ほほう、これはすばらしい」
ここに宝石や秘密の手紙を入れておくこともできます。また、毒物のようなものを入れておいても何かに使えるカモ。スパイ用品みたいなすばらしいものだ。
「すばらしいぞ」
王益喜、持帰以示夫人。
王ますます喜び、持ち帰りて以て夫人に示す。
王はさらにおよろこびになって、家に持ち帰って奥さまにお見せになった。
奥さまは、やはりモンゴル貴族の挙月思的斤(コゲステギン)さまでございます。
「どうじゃ、おもしろいじゃろう」
「・・・・」
奥さまはじっとそれを見つめていたのですが、やがて、
どっかーーーーーーんんんんん!!!!!!
夫人大怒。
夫人大いに怒れり。
奥さまは大爆発してお怒りになられた。そしておっしゃった。
令亟持去。
亟(すみや)かに持ち去らしめよ。
「すぐに持ち帰らせなさい!!」
「な、なぜ・・・」
爾平日曾以事害人、慮人之必我害也、当防護之。若無此心、則不必用此。
爾、平日かつて事を以て人を害し、人の必ず我が害たらんを慮るや、まさにこれを防護すべしとす。もしこの心無ければ、すなわち必ずしもこれを用うるなからん。
「あなたは、いつかの日に、何かあって、どなたかを傷めつけたことがあるのでしょう? そして、その人が必ずあなたに復讐しに来るのではないかと心配して、そのときに自分を守りたいと思っておられるのでしょう? もしそういうことがないのなら、こんなもの何にお使いになるのですか!」
「むむむ・・・」、
聞者莫不韙之。
聞く者、これを韙(い)とせざるなし。
「韙」(い)は「是(正しい)であることが偉である」という形成文字なんだそうで、「おおいにただしい」の意。
このことを聞いたひとは、みな「それは奧さんが大いに正しいなあ」と言ったそうである。
いかに大いに正しくても、わからないやつには諄々と説き明かしてあげればいいのに、突然「大いに怒る」とはおそろしいことではないであろうか。オンナのくせにオトコみたいにできると思って云々・・・(以下、肝冷斎のメモ欠)
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「山居新語」より。阿憐帖木児王はかなりいいひとのように思われまちゅねー。・・・と思ったら、さらに下の方にもこの王に関するメモがあるぞ。これは明日のお楽しみ、にちておきまちゅかねー。どうせPC等の問題でアップできないと思いまちゅけどねー。