何ものかに見張られているように感じることも多いが、真似されて困るようなことをしてはいけません。
眠り過ぎて遅刻。遅刻ぐらい真似してもいいと思いますが、↓は真似してはいけませんよ。
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元・恵宗の元統元年(1333)のことだそうですが、皇帝の姉君のご主人に当たる剛哈剌咱(ゴ―ハラサ)慶王という方が、大都(ペキン)の街中で、
偶墜馬、則両眼睛倶無、而舌出至胸。
たまたま馬より墜ち、すなわち両眼の黒睛ともに無く、而して舌出でて胸に至れり。
突然馬から落ちてしまい、助け起こしてみると、両目は完全に白目を剥いて、また舌がびよよ〜んと胸のところまで延びてしまっていた。
「これは・・・」
宮中務めの医官らがすぐに呼ばれてきたが、
諸医束手。
諸医手を束ぬ。
医官たちは(その症状を診て、)手が出せなかった。
「束手」は日本語でそのまま訓じて「手を束(つか)ねる」という言い回しになっていますが、本来は両手を縛ってしまうこと、転じて手が出ない、手を出さない、の意に使われます。
「どれどれ」
後れて呼ばれてきた広恵司の聶只児(ジャンキール)だけが、その様子を見て、
我識此証。
我、この証を識れり。
「ああ、この症状ならわかりますぞ」
と言いまして、診察箱から剪刀(ナイフ)を出してきた。
舌を左手で持って、
以剪刀剪去之。
剪刀を以てこれを剪去す。
ナイフでじょりじょりと、舌を切り取ってしまった。
少頃、復出一舌、亦剪之。
少頃、また一舌を出だすに、またこれを剪る。
しばらくすると、またもう一枚、びろろーん、と舌が出てきた。聶只児はまたそれもじょりじょりと切ってしまった。
又于其舌両側各去一指許、用薬塗之。
又、その舌の両側におのおの一指ばかりを去り、薬を用いてこれに塗る。
さらに、残った口の中の舌の左右両側を指一本分ぐらい切り取ってしまい、あとは創口に薬を塗りつけた。
しばらくすると、王は意識を取り戻し、
而癒。
而して癒えたり。
やがて治ってしまった。
亦異証也。
また異証なり。
なんとこれはまた、変わった症状ではないか。
なお、
広恵司、回回医人隷焉。剪下之舌、尚存。
広恵司は回回医人の隷なり。剪下の舌、なお存す。
広恵司というのは、イスラーム医学士たちの附属施設である。それから、切り落とした舌は、聶只児がそのまま保管しているそうである。
翌年の三月二十九日に、わたしが役所の仕事を終えて弁当を使っているときに、聶只児(彼は也里可温(エリカオン)族である)自身から聞いた話である。
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「山居新語」より。なるほど、本人から聞いたのか。これは信憑性が高い。が、絶対に真似してはいけません。(なお、これの元ネタです→これ)