令和元年5月9日(木)  目次へ  前回に戻る

ぶたとのとその宝物のごとき重臣、モグ、ナマケモノ、コアラたちだ。ぶたとのは立夏に至るまで冬眠していたモグにお怒りのごようすであるぞ。

更新担当者の一部は体調を戻しましたが、ほとんどがヤル気無しで逃亡中。今日が金曜日だとばかり思っていたらしいんです。しかも更新途中に何か変なところ押したらしく突然消えてしまった(←ほんとに悲しい)のでこれからやり直すのめんどくさいので、できるだけ簡単にやっときます。

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春秋・晋の定公(在位前511〜前475)のときのことだというので、もう春秋時代も末のころですが、楚の大夫・王孫圉(ぎょ)が晋の国に使いとしてやってきた。

定公は礼式どおりに歓迎の宴を開き、かたわらで卿の趙鞅が佩玉を鳴らしながら儀式の進行を司っていた。

席上、定公が訊いた。

楚之白珩猶在也。

楚の白珩(はくこう)はなお在りや。

「楚の有名な、純白の横長の佩び玉は、いまもありますかな」

圉、答えて曰く、

「あります」

横から趙鞅が訊いた、

其為宝也、幾何矣。

その宝たるや、幾何(いくばく)なる。

「宝物としての価値はどれほどなんですかな」

圉、ぎろりと睨んで、曰く、

未嘗為宝。

いまだ嘗て宝と為さず。

「それは、我が国では宝物とはしておりませんな」

「そ、そうでしたか」

楚之所宝者曰観射父。

楚の宝とするところのものは、曰く、観射父。

「我が国で宝物としておりますのは、まずは観射父(かんえきほ)ですな」

「それは人の名前ですよね」

「さよう。観射父は、外交文書の作成に長けており、それによって諸侯の間の問題を調整しますので、我が君が各国の方々から陰口を叩かれることがございません。

又有左史倚相。

また、左史の倚相(いしょう)有り。

次に、左側の書記官である倚相という者がおります。

彼は古典を整理して提示するのに巧みで、我が君に毎日毎晩、過去の成功例と失敗例を報告し、我が君がご先祖の業績を忘れることがないようにしております。

神に捧げる祈りのコトバを作ることも彼の職掌であり、その祝詞は、よく天上や地上の神々に願いを伝えることができます。

又有藪、曰雲。

また藪(そう)有り、雲と曰う。

それから、草木の繁茂した「雲」という地がございます。

ここでは金属や木、竹が取れますので、これを使って矢をこしらえることができます。

このほか倉庫には、

亀珠歯角皮革羽毛所以備賦用、以戒不虞者也。所以共幣帛以賓享諸侯者也。

亀・珠・歯・角・皮革・羽毛は以て賦の用に備うるところ、以て不虞を戒むるものなり。幣帛を共(そな)えて以て諸侯に賓享する所以のものなり。

占いに用いる亀の甲羅、火災を防ぐ珠、ゆはずにする象牙、弩弓を作るための犀角、敷物にする虎の皮、甲冑を作るための犀の革、かぶとに飾る鳥の羽、旗指物にするためのウシの尻尾、これらはすべて武力行使の用意として備えてあり、思いもかけないことが起こらないように、警戒するためのものでございます。そして、諸国のおとのさま方への贈り物として、献上することにも使えるものでございます。

このように、

諸侯之好幣具而導之以訓辞、有不虞之備而皇神相之。寡君其可以免罪於諸侯、而国民保焉。

諸侯の好幣具わりてこれを導くに訓辞を以てし、不虞の備え有りて皇神これを相(たす)く。寡君それ以て諸侯に罪を免れ、国民保たれん。

諸国のおとのさま方へのよき贈り物がそなわり、これをお届けするにはよき外交文書により、また思いもかけないことが起こらないようにする準備を整えて、天上と地上の神々にもお助けをいただければ、我が君は諸国のおとのさま方に罰せられることも無く、人民もよく治まりましょう。

此楚国之宝也。若夫白珩先王之玩也、何宝焉。

これ楚国の宝なり。かの白珩のごときは先王の玩なり、何ぞ宝とせんや。

これらが楚の国の宝です。あの純白の横長の佩び玉なんか、王のご先祖がてなぐさみのおもちゃにしておったというだけで、どうして宝などになりましょうか」

「そ、そうなのか」「そ、そうですか」

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「国語」巻十八・楚語下より。

よくしゃべる人やなあ、と思うかも知れませんが、まだ続くんです。これは明日のお楽しみに。

 

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