「おかわり自由」のサービスを逆手に、無制限に食べる。ぶたとのの権力欲は飽くことを知らない。これに匹敵しうるのは巨大ニワトリしかないのか。
月曜日でした。感情なし。動こうとするキモチも無し。
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戦国の時代のことでございます。
魯丹三説中山之君、而不受也。
魯丹みたび中山の君に説くも、受けられず。
魯丹という説客が、中山国の君主に三回政策を説明したが、受容されなかった。
「ふーむ」
魯丹は考えて、
散五十金事其左右。
五十金を散じてその左右に事(つか)う。
金貨五十枚をばらまいて、王の側近たちに賄賂を贈ってみた。
そして、
復見未語、而君与之食。
また見(あ)いていまだ語らざるに、君はこれに食を与えたり。
再び中山君に面会を求めたが、その席では特に何の発言もしなかった。それなのに、中山君は、魯丹にご飯を出させて厚遇した。
普段はご飯無しだったのに、このときは一緒にご飯を食べるという厚遇をしたのです。
魯丹はご飯を食べ終えて宮殿を出てくると、
「これはいかん、いかんぞ!」
と大慌てで、
不反舎、遂去中山。
舎に反らず、遂に中山を去る。
宿舎にも寄らずに、すぐに中山国から退出しようとした。
「はやく、はやく国境を出るのじゃ!」
其御曰及見之始善我、何故去之。
その御、曰く、これに見(あ)うに及んで始めて我に善くせるに、何故ぞこれを去る。
馬車の御者が訊ねた。
「先ほどの御面会は、はじめて先生に対して厚遇をしてくれました。(五十枚に金貨をばらまいた結果が出たのでございましょう。)それなのに、どうして急いでここを去ろうとされるのですか」
魯丹は、恐怖でびくびくしながら答えた。
夫以人言善我、必以人言罪我。
それ人言を以て我に善くす、必ず人言を以て我を罪せん。
「ああ、側近の者たちのコトバによってわしを厚遇したのだ、次は絶対に誰かのコトバによってわしを罪しようとするであろう」
そして御者に命じた、
「はやく、はやく国境を出るのじゃ!」
そのころ、中山君のもとには公子さまが面会を求めておられました。
「父上、魯丹という者、側近どもにずいぶん金貨をばらまいたようでございますぞ。おそらく彼は
爲趙来間。
趙のために来たりて間す。
趙の国が遣わしてきたスパイではないか、と思われます」
「なんと」
そこですぐに調べさせると、すでに国境に向けて出発した後だ、という。
「なんじゃと!」
「ああ、やはり、言わんことではない」
中山君は兵を発してその後を追わせたのであった。さて魯丹の運命や如何。
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「韓非子」巻七・説林上より。ごはんを食べさせられたら危ないんです。気をつけましょう。
ちなみに「韓非子」によりますと、魯丹は逃げきれずに捕らえられて殺されたらしいのでございます。このレベルの賢者でもやられてしまうのだ。君主なるもの(すなわち権力の所在)に近づき献策することの難しさが伝わってまいりますね。ああ恐ろしいなあ。わたしどもはやる気無しなので大丈夫ですが、みなさんが心配だなあ。