平成30年10月31日(水)  目次へ  前回に戻る

実りの秋である。案山子で効き目が無いと、より高等な科学的手段が採られることになるのだから、案山子のような原始的手段でもコワがっているふりをしておかねばならない。

最近天気がいい日が続いています。

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天気が崩れて雨が降るとひとびとの営みに影響が出てまいります。あんまり降るときは対策を講じなければならない。

嘉慶元年(1796)広州で苗族が叛乱を起こしたことがあった。

将軍の福康安が兵を率いて征伐に向かったが、

時値四五月、霖雨間作、無一日晴者。

時は四五月に値(あ)い、霖雨間(まま)作(おこ)りて一日として晴るること無し。

ちょうど季節は(太陽暦の)五月〜六月、梅雨時で、しとしとと降る雨がいつも降って、晴れる日が一日も無いような状態であった。

これでは作戦行動に影響を及ぼすというので、

福公憂之、命道士祈晴、不応。

福公これを憂い、道士に命じて晴を祈らしむるも、応ぜず。

福将軍は心配して、道士に命じて晴れるよう祈らせたのだが、効き目は無かった。

そこで、

「最後の手段じゃ」

と、

遣鳥槍兵向天而開、始放日光、隔数日雖開槍、亦不応也。

鳥槍兵をして天に向かいて開かしむるに、始めは日光を放つも、数日を隔てて開槍といえどもまた応ぜずなりぬ。

鉄砲隊に命じて、空に向かって鉄砲をぶっ放させた。すると、雲に切れ間が出来、日の光が射してきたのである。ところが、効き目があったのは最初の数日だけで、何日か経つと銃をぶっ放しても効き目は無くなってしまった。

―――本当ですか?

とすぐ何でも疑うやつがいますが、

此余弟子楊生補帆在軍中親見其事。

此れ、余の弟子・楊生補帆の軍中に在りてその事を親見せしなり。

このことは、わしの弟子の楊補帆が従軍していて、自分の目で実際に見てきたことなのである。

本当に決まっているではありませんか。

聞甘粛省毎遇陰霾致損田禾、須開鳥槍打散、亦此意也。

聞くならく、甘粛省にて陰霾(いんばい)に遇いて田禾(でんか)を損うを致すごとに、鳥槍を開くを須(もち)いて打散せしむるは、またこの意なり。

「霾」(ばい)は「つちぐもり」あるいは「つちあめ」と訓じ、空中に捲き上げられた黄砂などによる日照障害や降砂現象をいいます。

聞くところによると、西北部の甘粛では砂漠化が進んでしまい、土砂による日照障害が起こって稲作に悪影響を及ぼすことがある。その場合には、つねに鉄砲をぶっ放して空中の土砂を打ち散らすのだそうであるが、それも同じ考え方であるようだ。

科学的である。

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「履園叢話」二十三「雑記上」より。なんか閉塞状態に陥ったら、鉄砲発射するといいみたいです。

 

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