平成30年10月21日(日)  目次へ  前回に戻る

カメにも遁走されてしまうとは、情けないウサギどもでぶー。

明日から平日。出勤ムリです。またロボかデクを行かせるか。

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清の時代のことだそうです。

山東の肥城の某村に

有狐在一媼家、与人言休咎。

狐の一媼の家に在りて、人のために休咎を言う有り。

狐(コ)があるばばあの家に住んでいて、ひとの運命の吉凶を予言してくれる、と評判であった。

いつも申し上げておりますが、チャイナの「狐」は、キツネの姿をまったく現さないことが多いので、「狐」(コ)と音読みにして、精霊の一種だ、と思っておく方がぴったりします。したがって、以下、「狐」は(コ)と読んで行ってください。

付近の運河の管理を所管する于少府というひとが、そのばばあの家を訪ねてみたところ、

至則堂中懸白鬚老人像、向之長揖。

至れば堂中に白鬚の老人像を懸け、これに向かいて長揖す。

到着すると、まずは正堂に案内される。そこには白いヒゲの老人の画像が掛けられており(これが「狐」らしい)、訪問者はこれに向かって長々と一礼することになっている。

すると、やがて、

聞壁上応曰、不敢当、請坐。

壁上に応じて「敢て当たらず、請う、坐せよ」と曰うを聞く。

壁のあたりから、「歯向かいはしませんよ(。よく来てくだすった)。お座りください」という声が聞こえてくるのである。

しばらくしてもこの声が聞こえてこないようなら、ばばあがやってきて「今日はお引き取りくだされ」と言うのだそうだ。

于少府は壁の声が聞こえた。その声は、

命媼進茶、声嚶嚶類鳥語、非諦聴不弁。

媼に命じて茶を進めしむるに、声嚶嚶(おうおう)として鳥の語に類し、諦聴せざれば弁ぜず。

ばばあに「お茶をお出ししないさい」と命じた。その声は、「ああ、ああ」とまるで鳥の声のようで、集中して聴かないと何を言っているのかわからない。

声はよく聞こえないのですが、ばばあが間に入って解説してくれるので、その趣旨はわかるのだそうです。

于少府が何を占ってもらったのかは伝わりません。しかし、少府はその答えに大いに感心して、役所の関係者に、あちこちで「某村の狐はよく当たる」と吹聴した。

さて―――

数月後、肥城令少子病、夫人遣僕往問、狐曰可治。併写方付之。

数月後、肥城令の少子病み、夫人僕を遣りて往問せしむるに、狐曰く「治すべし」と。併せて方を写してこれに付す。

数か月後のこと、肥城の知事のまだ幼い息子が病気になった。知事夫人は某村の狐がよく当たるというので、下男を村に遣わして病状について質問させた。

狐は「治ります」と明確に答え、あわせて、飲ませるべきクスリの処方箋まで書いて下男に持たせてくれた。

下男は文字の読み書きができない。ばばあも文字など書けそうにない。

「それではこれは狐が書いたものなのだろう」

と信用しまして、

飲其薬、洞泄而卒。

その薬を飲ましむるに、洞泄して卒せり。

そのクスリを処方して子どもに飲ませてみたところ、

「ぷぴー」

大いに腹を下して、死んでしまった。

「なんということじゃ!」

令大怒、命拘媼至、将治其罪、狐先期遁、媼亦遂死。

令大いに怒り、命じて媼を拘して至らしめ、その罪を治せんとするに、狐、期に先んじて遁し、媼また遂に死せり。

知事は大に怒って、ばばあを捕らえてこさせ、その罪を罰しようとしたのだが、狐はそれより先に遁走してしまったということであり、ばばあも間もなく死んでしまった。

そうです。

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「翼駉稗編」巻二より。当事者の一人である于少府から著者が聞いた話だそうですから、真実でしょう。おそらく。

ミスなのか意図的なのかわかりませんが、確かにこの「狐」の立場としては遁走するしかないであろうと思われます。ついでに、わしもいろいろあるんで遁走します。あとはロボかデクが何とかすると思います。

 

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