平成30年9月5日(水)  目次へ  前回に戻る

秋口になるとご出現なさる勇者たち。左から、くもんちょ、カーマ・ド・ウーマ、最強勇士ブリキーゴ、賢者ゲージゲージ。その姿を見せるだけで、お高くとまったりシゴトも出来たりアエラを読んだりする美しいにょにんたちの毛を逆立てさせ、震え上がらせる我らが英雄たちだ。特にブリキーゴは時々羽を広げて突進してきたりもするぞ!

今日は台風一過で暑かった。体力尽きてきました。もうシゴトマジメにやるのはムリだ。なんとか楽して儲かる方法はないかなあ。

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馬の能力を見抜くので有名な伯楽さまですが、

教其所憎者相千里之馬。

その憎むところの者には千里の馬を相するを教う。

気に入らない弟子には、一日に千里を走る超絶名馬を見抜く方法を教えて卒業させた。

一方、

教其所愛者相駑馬。

その愛するところの者には駑馬を相するを教う。

お気に入りの弟子には、のろまの馬を見分ける方法を教えてやって卒業させた。

なぜであろうか。

千里之馬、時一、其利緩。駑馬日售、其利急。

千里の馬は時に一なれば、その利は緩。駑馬は日に售(う)らるれば、その利は急。

一日に千里を走る馬なんて、一時代に一頭も出ればいい方で、まず滅多にそれで儲けられることはない。これに対して、のろまの馬は毎日どこかで売りに出されているから、のろまの馬であることを見分けることは、すぐに儲けにつながるからである。

なるほど。

此周書所謂下言而上用者也。

これ、周書にいわゆる「下言にして上用なるもの」なり。

これこそ、「周」の古書にいう、「下世話なことだが大事なことにも役に立つ」という「お話」であります。

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「韓非子」巻七・説林下篇より。わーい、勉強になりました。ただし、このコトバの入っている「周書」はゲンダイには伝わっていないようです。

戦国末の説客たちは、こういう「お話」をたくさん記憶しておいて、君主や上司に何かを説得するときにうまく組み合わせて使ったわけです。みなさんもがんばって勉強しましょう。

ところで、今日、都内の某公園で、真昼間にヘビを見ました。シマヘビだと思いますが、ヘビを見るのは久しぶりなので感動した。きゃあきゃあ嫌がっているやつもいたが、うねうねした動きなどを見ていると、生命の本質を教えられたようであり、力づけられた。そこで、同書より、ヘビを恐れてはならないという「お話」も紹介しておきましょう。

鱣似蛇、蚕似蠋。

鱣(せん)は蛇に似、蚕は蠋(しょく)に似たり。

ウナギはヘビに似ている。カイコはイモムシに似ている。(実際は「カイコ」は「イモムシ」に似ているんではなくて、その一種なんですけど、気にしないでください。)

人、見蛇則驚駭、見蠋則毛起。

人、蛇を見れば驚駭し、蠋を見れば毛起(た)つ。

ひとは、ヘビを見るとびっくりするし、イモムシを見ると毛が逆立つ(ようにキモチ悪がる)。

ところが、

漁者持鱣、婦人拾蚕。利之所在、皆爲賁諸。

漁者は鱣を持し、婦人は蚕を拾う。利の在るところ、皆、賁(ほん)と諸(しょ)なり。

漁師はウナギを手に持つし、家庭の女性はカイコを手で取り上げる。つまり、ニンゲンは、利得があると思えば、孟賁(もうほん)や専諸(せんしょ)のようになるのだ。

孟賁は秦の力士で勇猛果敢、専諸は呉の侠客で僚王を暗殺したひと。いずれも死を恐れぬ勇者の代表とされます。

・・・確かにこういう損得のためには勇猛なタイプの勇者はいますよね。ほら、みなさんの覗き込んだ鏡の中に。うっしっし。

 

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