なんとか浮くことだけはできるが、ほとんど進まないぶたとの。アンコウくんが海底に案内してくれるようだ・・・。
今日も暑かった。しかしわれらはぶたとののように享楽はできぬ。来週のツラさを乗り越えられるような強い人間性を得られる日まで、学問せねばならぬのだ!
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元の時代のことですが、上海に瞿霆発(く・ていはつ)という大富豪がおられました。
あるとき、
有貧士偽作張文質運使書持以干公。
貧士の、張文質運使の書を偽作して持ちて公に干(もと)むる有り。
貧しい士人が、転運使の張文質さまの手紙を偽造して、これをもとに瞿公に出資を求めて来たことがあった。
「そうですか」
瞿公は確認もせず、
即命幹者以鈔三定助行。
即ち幹者に命じて、鈔三定を以て助行せしむ。
すぐに(自分の部下の)幹事の者に、紙幣三枚を補助するよう命じた。
しかしながら、幹事の者はいろいろと注意深く調べて、
知其偽、沮之未与。
その偽りなるを知りて、これを沮みていまだ与えず。
これが偽造してものであることを知って、命令を執行せず、補助金を渡さなかった。
数日後、
貧士復見公于轎前。公乃駐轎命即取五定、加以温言、慰而遣之。
貧士また公に、轎前に見(まみ)ゆ。公すなわち轎を駐(とど)め、命じて即ち五定を取り、加うるに温言を以てし、慰めてこれを遣れり。
貧しい士人は、瞿公の乗ったカゴの前に現れて懇願した。公はカゴを止めさせ、すぐに紙幣五枚を取り出させて手渡し、さに優しいコトバを述べて慰めた上で立ち去らせた。
その後、幹事が苦虫をかみつぶしたような顔で、
「あの男の持って来たのはニセモノですぞ」
と言うと、瞿公はおっしゃった。
汝知之乎。人何不作書干你、何怪之有。
汝これを知るか。人の何か書を作りても你(なんじ)に干むるにあらざれば、何ぞこれを怪しむ有らんや。
「おまえに言っておくぞ。誰かが書状を偽造してきても、おまえに請求してきたのではない場合(今回求められたのはわしである)、その書状を怪しむ必要は全くないのじゃぞ」
「は、はあ・・・」
聞者咸服其度量云。
聞くもの、みなその度量に服すと云えり。
これを聞いた者は、みんな、瞿公の度量の大きさに感服した、ということだ。
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元・楊瑀「山居新語」より。そうだ、学問よりやはりカネだ。カネがあればどんな困難も乗り越えられることができるような気がしてきました。学問なんかしているヒマがあったら、カネ儲けのことを考えることにします。追い込まれているので、来週までに何とか・・・。
本書「山居新語」の著者である楊禹(よう・う)、字・元誠というひとは、世祖フビライ=ハンの至元二十二年(1285)浙江杭州の生まれ、文宗の天暦年間(1328〜29)に太史院判官に挙げられ、恵宗の至正年間(1341〜68)には浙東道都元帥にまで至って致仕し、退いて至正二十一年(1361)に卒した、というひとです。本書は引退後の晩年に、その目撃した、あるいは耳にした事件をかなり手広く記録した書物で、今回引用したのは社会に役立つかなりマジメな話なんだと思いますが、大官に至った文人であられるにも関わらず、妖怪のことや世間の噂話、ゴシップ類までいろいろメモしてくれていて、ありがたい。