平成30年8月3日(金)  目次へ  前回に戻る

ぶた祭りの夜、勇壮なぶた太鼓が鳴り響く。その響きに勇気を与えられるひともいる・・・かもしれない。いや、いないか。

なんとか週末。夏祭りをどこかでやってるかも知れませんが、わしらは学問じゃ。少しでもニンゲンを磨かねば、またやってくる来週に押しつぶされるであろうゆえに。

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後漢の末の混乱の時代、ともに学問に励んでいた王朗華歆ですが、ついに戦乱は彼らの身の廻りにまで及び、二人は

倶乗船避難、有一人欲依附。

ともに船に乗りて難を避けんとするに、一人の依附せんと欲する有り。

いっしょに船に乗って避難しようとした。そのとき、もうひとり、一緒に逃げさせてくれと頼んで来たひとがあった。

「いや、そうはいかんぞ」

歆輒難之。

歆、すなわちこれを難ず。

華歆は即座に文句をつけた。

「まあいいではないか」

朗曰、幸尚寛、何爲不可。

朗曰く、幸いになお寛なり、何ぞ不可と為さんや。

王朗は「さいわいにまだ人を載せる余地はある。どうしてだめだということがあろうか」

と言って、そのひとを乗せてやった。

うーん、ふむふむ。

華歆はにやにやしながらそれ以上は文句を言わなかった。

後、賊追至、王欲捨所携人。

後、賊追い至り、王は携うところの人を捨てんと欲す。

やがて、(たくさん人を乗せた船は船足が遅く、)どんどん賊軍が近づいてきた。王朗は乗せてやった人を下ろしてしまおうとした。

すると、

「まあ待て」

と華歆が言った、

本所以疑、正爲此耳。既已納其自託、寧可以急相棄邪。

もと疑う所以は、まさに此れがためなるのみ。すでにその自託を納る、なんぞ急を以て相棄つるべけんや。

「最初にどうしようかなあと思ったのは、まさにこういうことになるだろうと思ったからだ。だが、すでに彼が身を寄せてきたのを受け入れたのだ、いまさらヤバくなってきたからといって放り出すことなどできんぞ」

むむむむ。

うっしっし。

遂携拯如初。

遂に携拯すること初めの如し。

とうとう当初の方針どおり、そのひとを連れて逃げてやったのであった。

さて、

世以此定華王之優劣。

世これを以て華・王の優劣を定む。

世間は、この事件を材料に、華歆と王朗のどちらが優れているかを判断したのである。

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「世説新語」徳行第一より。実はどちらが優れているのか、わしにはわかりませんのじゃ。王朗のように積極的な判断をするひとの方が優れておるときもあるような、華歆のような文句だけつけておいて後は成り行き任せの方がエラクなるような。それでも判断できるのだから、世間のみなさんたちは賢いのじゃなあ。

 

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