平成30年4月25日(水)  目次へ  前回に戻る

ぶたとのを支配しようとするヒヨコたち。彼らはいったいどんな野望を持っているのだろうか。

週の真ん中まで来ました。今週は今のところあんまりツラいことは起こっていません。あと二日、生き抜けるか?

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本当はこの類のお話は週末にニヤニヤしながらしたいんですが、興味深いお話がありましたのでご紹介しましょう。

清の時代のこと、福建・泉州に承天寺というお寺がありましたが、この寺には、不思議な遺物が多くありましたのじゃ。

まず、

寺中有九十九井。

寺中に九十九の井あり。

この寺には、九十九の井戸があった。

んだそうです。言い伝えによりますと、以前、

一僧畜異志、欲掘百井為兆、後功虧其一而止。

一僧異志を畜わえ、百井を掘りて兆と為さんと欲し、後、功その一を虧きて止む。

ある僧が恐ろしい野望が抱き(その内容は伝わっておりません)、百の井戸を掘ればその願いが成就すると考えて、次々と掘ったのですが、あと一を遺して世を去ってしまった。のだとか。

承天寺では、今も寺内の土地を掘削することを許さないそうです。もし掘っていて、水が出てきてしまうと、その僧の所願が成就してしまい、何かしらおそろしいことが起こってしまうからなのだ、という。

「なるほど」

さて、この井戸については、さらに、

築石塔数処。凡蒼蠅飛集塔上、無論多少、頭皆向下、無有小異者。

石塔を数処に築けり。およそ蒼蠅の飛びて塔上に集まるに、多少を論ずる無く、頭みな下に向かい、小異者も有る無し。

いくつかの井戸にはその上に石の塔が築かれているのだが、それらの塔に青ハエが飛んで集まってくることがある。そのとき、塔に止まった青ハエは、その多少に関わらず、すべて頭を下にして止まっていて、たった一匹でも例外があることはない。

「なんと、不思議だなあ」

それから、

山門口有梅花石。

山門口に梅花石なるもの有り。

山門の入り口に「梅花石」といわれる石がある。

この石は、

光而平、中隠梅影一枝。

光ありて平らにして、中に梅影一枝を隠す。

ぴかぴかと光沢があって表面が平らなのですが、中側からまるで梅の枝(のような模様)が浮かび上がっているのである。

そして、

毎年梅樹開花時、影上亦有花、生葉時、影上有葉、遇結子時、影上有子。若花葉与子倶落之時、則影上惟存枯枝而已。

毎年梅樹花を開く時、影上また花有り、葉を生ずるの時、影上葉有り、子を結ぶ時に遇いては、影上子有り。花・葉と子、ともに落つるの時のごときは、すなわち影上ただ枯枝を存するのみなり。

毎年、梅の花が開く時節になると、この石の上の模様にもまた花(らしきもの)が加わり、葉が出る時節になると、模様に葉が現れ、梅の実が成るころには、やはり模様にも実が成っている。花も葉も実もすべて落ちてしまったころには、ただの枯れ枝の模様だけが残っているのである。

「わー、不思議だなあ」

寺の中には、また、「魁星石」という石があります。

「魁星」(かいせい)は、北斗七星のうちひしゃくの柄ではなく水を入れる部分にあたる四つの星をいいますが、ここでは北斗七星そのものを言っていると思われます。

この石は、

近視無物、遠望如一幅淡墨魁星図。

近く視れば物無きも、遠く望めば一幅の淡墨の「魁星図」の如し。

近くで見たときには何も見えないのだが、少し離れたところから見ると、まるで一幅の淡い墨で描いた北斗七星図のように見えるのである。

「ほんと、不思議だなあ」

それだけでなく、

至天将雨時、石上綻出水珠、亦厳然結一魁星形也。

天のまさに雨ふらんとする時に至るや、石上水珠を綻出し、また厳然として一魁星の形に結ぶなり。

天候が雨になろうとするときには、石の上に水玉が浮かび出てくるのだが、この水玉がまたきっちりと北斗七星の形に並ぶのじゃ。

「わーい、わーい」

惜しいことに、

蘇鼇石、皆忘却。

蘇鼇石なるもの、みな忘却せり。

「蘇州のワニ石」というものがあるのだが、これについては言い伝えが残っていない。

残念です。

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清・梁章鉅「帰田瑣記」巻三より。著者によれば「もともと「塗説」という本に書いてあった」ことだそうです。ウソ偽りのお話だったとしても、他人の書いた本の責任であって自分の責任ではないと言いたいのかも知れません。なお、著者の梁章鉅さんについてはこちらを参照ください。実は立派なひとなんです。

ところで、この本の裏見返しには「平成23年2月27日(日)読了」と当時の肝冷斎のメモが記されてありましたので、震災直前ごろの肝冷斎が愛読していたようです。今日訳した「承天寺」の章には、「重要」と書いて〇印がついていましたが、この章のどこが「重要」と思ったのか、ちょっと見当が着きません。これを見るだけでも、ゲンダイ社会ではやっていけないような、オロカなやつだったのだろうということがわかります。いろいろツラかったんだろうなあ。

 

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