みなさんとはもうお別れしたんだっけ、してないんだっけ。
やっと週末。今週もいろいろあった。まだ現世にいるのが自分でも不思議である。
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数年前のこと(←読者のみなさんから見たら数百年前のことですが)なんだそうですが、蘇州の家広文の話では、
小王村外古廟、有人自縊。
小王村外の古廟に、人の自ら縊れたる有り。
小王村の村の外にあった古いお堂で、誰か首を吊ったやつがいた。
村長から県庁に報せたところ、明日の朝にお役人が改めに来るというので、村の甲某という男を雇ってひとばん首吊り死体の番をさせることにした。
抵晩、甲携燈挈酒入廟。
晩に抵(いた)りて、甲は燈を携え、酒を挈(ひっさ)げて廟に入る。
日が暮れたころ、甲は燈火を手に、酒の壺をさげてお堂に入った。
甲の隣に住む乙が、そのあとをつけてきた。乙はことごとに甲と争っていたので、甲の評判を下げてやりたいと思っていたらしい。
欲嚇之、持棍従門隙窺。
これを嚇さんと欲して、棍を持して門の隙より窺えり。
甲を脅かして恥をはかせてやろうと、こん棒を持ってお堂の門の外から中を伺っていた。
すると、甲は
酌酒対尸曰、何不請一杯。
酒を酌みて尸に対して曰く、「何ぞ一杯を請わざる」と。
酒をさかずきに酌んで、ぶら下がったままの死体に向かってさしむけると、「どうして「わしにもいっぱいくだされ」と言わないのだ?」と話しかけている。
もちろん死体は答えない。
甲は「ふふん」と笑って、
遂自飲。
ついに自ら飲む。
結局、自分で飲んでしまった。
継又酌曰、爾真死耶。何不同我飲一杯。
継いでまた酌みて曰く、「爾、真に死ぬるや。何ぞ我と同じく一杯を飲まざる」と。
それからまたさかずきに酌んで言う、「おまえはほんとうに死んでいるのかなあ。どうしてわしと一緒に飲まないのだ?」と。
そしてまた自分で「ぐい」と飲んでしまった。
その後も
毎酌勧譲甚殷。
酌むごとに勧譲すること甚だ殷なり。
さかずきに酌むごとに死体相手にたいへんさかんに酒を勧めていた。
そうこうしているうちに、
酒将竭。
酒まさに竭きんとす。
壺の中の酒が尽きてきて、どうやら最後の一杯になったようだ。
「これでもまだ飲まないのか?」
と言いながら、甲がさかずきを自分の口に持っていこう、としたとき・・・・・!!!!!!
縊者双手忽起自解其索、足已及地、前謂甲曰、我便同你吃一杯。
縊者の双手たちまち起こりて自らその索を解き、足すでに地に及びて、前(すす)みて甲に謂いて曰く、「我すなわち你とともに一杯を吃せん」と。
ぶらさがった死体の両手が、突然、ぶらん、と動いたのだ!
両手は首に巻き付いた縄を解きほぐし、死体の足は床に降り立った。そして、甲の方に一歩二歩進んで、
「おまえと一杯、飲ませてもらおう。ひっひっひ」
と、たしかに言ったのだ!
「うひゃああああああああああ」
甲大驚、啓門而逃。
甲大いに驚き、門を啓きて逃る。
甲は大いにびっくりして、お堂の門を開いて逃げ出した。
乙亦懼、随甲奔。甲謂縊鬼追逐、疾走至村舎、狂叫、縊鬼追来。
乙また懼れ、甲に随いて奔る。甲、「縊鬼追逐せり」と謂いて、疾走して村舎に至り、「縊鬼追来せり」と狂い叫べり。
このようすを見ていた乙もびっくりして、甲のあとから逃げ出した。甲の方は誰かが追ってくるので「首吊り人の幽霊が追いかけてくるのだ」と言ってものすごい勢いで走り、村の集会場に逃げ込んで「く、首吊り幽霊が、追ってくるのだ!」と狂ったように叫んで助けを求めた。
「なんだと!」
村人ら、こん棒を手にして表に出ると、確かに誰かが追いかけてくる。
一人ずつなら怯んだところだが、明るいところで何人もいるのである。幽霊らしきものを取り囲んで、したたかいにぶん殴って、倒れたのをよくよく見れば、
追者乙也。
追う者は乙なり。
追いかけてきていたのは乙であった。
みんなで集会場に運び込んで介抱しながら、
共語故。
共に故を語る。
甲と乙から何が起こったのか聞き取ったのである。
「首吊り死体が動くなんてことがあるものか・・・」
そこで、二人を先頭に
同至古廟、縊者仍懸梁上。
同じく古廟に至るに、縊者なお梁上に懸かれり。
みんなでお堂に行ってみたところ―――首吊り人の死体は、やはり梁にかけた縄からぶら下がったままだった。
ただ、甲が床に置いていったさかずきの中に残っていたはずの酒は、誰かに飲み干されていた、ということである。
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清・朱海「妄妄録」巻四より。ほんとはわたしも実はこんな感じで、ほんとは現世にいないんだけどちょっとだけ動いてこの更新だけしている、という状態なのかも知れませんよ。ひっひっひ。