平成30年2月11日(日)  目次へ  前回に戻る

巨大ニワトリが風呂に入っていると、ひよこどもが野菜やシラタキを入れてきたりする。ただ出汁をとるだけだったらいいのであるが・・・。普段食べつけないモノを食べるのは危険である。

ああ、よく寝た・・・と思って起きたら、なんと! ブタになってしまっていましたのでぶー。今日からはぶた肝冷斎の更新になりまぶ。

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明の隆慶四年(1570)のことだそうですが、太倉州というところで事件が起こりました。

百姓の某という者が、晩飯を食っている最中に、

失所在、地上止存髪一縷、衣服冠履、事事皆在、如蛻形者。

所在を失い、地上にただ髪一縷を存するのみなれども、衣服冠履は事事みな在りて形を蛻する者の如し。

どこかにいなくなってしまい、地面には髪の毛一本を遺すのみであった。一方、身に着けていた衣服やかぶりものやはきものはそのまま残っていて、まるでセミが抜け殻を残して消えてしまったかのようであった。

女房のなんとかがこれを見て、

驚怖号喚。里甲聞之、以婦謀殺夫而詐諼也、録之官。

驚怖して号び喚く。里甲これを聞きて、以て婦の夫を謀殺し詐諼(さけん)するならんとして、これを官に録す。

驚き恐れて叫び喚いた(ので、村人らが集まってきて、事件を知ったのであった)。村長は、これを聞いて、「女房のやつが夫を計画的に殺して、それを誤魔化そうとしているにちがいないだ」と考えて、女房を役所に突き出して来たのである。

「うーん、それはたいへんな事件だなあ・・・」

州知事の黄廷宣が女房をよくよく調べたのだが、女房は全くそのようなことはないという。何しろ女房が言うとおり、夫婦仲は基本的に円満、女房も夫もごく普通の人間で、女房には夫を殺す理由が何も無いのである。

女房の言や村人らの証言をかんがみるに、百姓某は、その日の仕事帰りに、

道見漁者、持一鱉而三足、買帰令婦烹之。

道に漁者の、一鱉にして三足なるを持するを見て、買い帰りて婦にこれを烹さしむ。

路上で漁師が、三本足のスッポンを鬻いでいるのを見て、これを買って帰ってきて、女房に煮させたらしい。

女房は「これは気味が悪いよ」と言いながらも夫の言うとおり、このスッポンを煮たのである。ぐつぐつ。

既熟、呼婦共餐、婦不欲食、出坐門外。久之、不聞其夫声、入視、已失所在。

既に熟し、婦を呼びて共に餐せんとするも、婦は食らうを欲せず、出でて門外に坐す。これを久しくして、その夫の声を聞かざれば、入りて視るに、已に所在を失えり。

煮えたところで料理を出すと、夫は女房に「一緒に食おう」と言ったそうなのだが、君が悪いので女房は食う気にならず、「あんた、ひとりで食いなよ」と言って、表に出て、家の門の外に座っていたのだそうなのである。ずいぶん時間が経ったのに、夫が何も言ってこないので、入ってみたところ、もう上述のように衣服だけ遺していなくなってしまっていた。

というのである。

「うーん、そういうことがあるものなのかなあ・・・。あるのかなあ・・・。そうだ!」

そこで、黄廷宣はある方法を思いついた・・・

この事件、なかなかみなさんのような近現代人の想像の及ぶところではない事件なのですが、本日はここまでとさせていただきまして、以下、続きは明日(以降)とさせていただきます。

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明・陸粲「庚巳編」巻一より(「続耳譚」巻五所収)。

起きたらぶた肝冷斎になってしまっていた、というのもみなさん近代人の理解の及ぶところではないでしょうが、なってしまったんだからしようがない。まあ、いいや。これまでより、より悪くなることは無いであろう。

前の世の 我が名は、

人に な言ひそよ。 (釈迢空「春のことぶれ」より)

 

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