「うっひゃっひゃー」「ひいっひっひっひー」サンタクロースたちも明日がまた平日で、不安と緊張のために異常を来たしているにちがいないであろう。もしも実在するならば。
もう日曜日の夜になってしまった。神もホトケも無いものか。
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明の時代のことですが、浙江・鎮江に陽世敷というひとがいて、
貿粟為生。
粟を貿して生を為す。
穀物の売り買いを生業としていた。
このひとが、
萬暦戊戌六月、震雷撃死。
萬暦戊戌六月、震雷に撃たれ死せり。
萬歴二十六年(1598)の六月、カミナリに打たれて死んだ。
仕事中であったので、仲間の米穀商人たちが集まってきて死体を検分したが、その死体は背中のところで衣服が裂けており、
背有朱書一行、如卦文類、観者如蟻、皆莫能弁。
背に朱書一行、卦文の類の如きもの有りて、観者蟻の如きもみなよく弁ずるなし。
焼け焦げた背中の皮膚に、そこだけ朱色で一行の文字が浮かんでいた。その文字はまるで八卦の卦文(こんなやつ→☴)のような記号で、たくさんひとが集まっていたが、誰ひとりとして読める者はいなかった。
←こんな感じ。
ちょうどそこへ
一羽人手持一杖来、衆詢之。
一羽人、一杖を手持して来たり、衆これに詢(と)えり。
道士が一人、杖を手にして通りがかったので、仲間たちは彼を呼び止めて、
「この背中の記号は道教の寺院でくれる符簶(おふだ)に書かれている字に似ているが、道士さまはお読めになれますかい」
と訊ねた。
「ふむふむ」
道士はしばらくその文字を見ていたが、やがてにやりと笑うと、
「このひとは穀物の商いをしていたひとなのかね?」
と問うた。
「そうだが、いったいなぜそれがおわかりに?」
道士は
「誰か鏡を持っておいで」
と鏡を持って来させて、
以杖立竪字中。
杖を以て竪に字中に立てたり。
杖を文字の真ん中に縦に置いた。
そして、そこに鏡を背中と垂直になるように置かせて、
「読んでみなさい」
というので覗き込むと、
分明米中下水云類。
分明に「米中に水を下す」と云うに類せり。
はっきりと、「米の中に水を入れた」と書いてあるように読めた。
←こうなったのじゃ。
道士曰く、
凡貿先和以水。
およそ貿するに先んじて和するに水を以てせるならん。
「おおかた、穀物を売る前に水を含ませて、重量を水増しして売っていたのじゃろう」
そして、陽の商売仲間たちをじろりと見まわして、
「そのバチが当たったんじゃな。気をつけねばならんなあ、バチは必ず当たるからのう」
そう言って道士は去って行ったのだが、その言葉を聞いて、米穀商仲間たちの顔色は一様に青ざめていた、ということである。
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明・劉忭等「続耳譚」巻三より。やっぱり神さまっているんだなあ。普段はどろどろのみなさんの心も、今宵はクリスマスソングなどを聞いて少しは清くなっていることでしょうから、いろいろ考えれば思い当たるところもあるでしょうなあ。ひっひっひっひっひ。