こんな離島を本拠地にしていても、通信販売はできるよ! 船が見つかれば。
今日もまたいい天気でした。休みでシアワセだなあ。明日? あわあわあわ、そんなものは、無い!無い!ナッシングなのだ!
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清の時代、蘇州・斑竹巷に一軒の骨董屋があって、そこの主人は、
姓董、忘其名号、酷好説骨董、径呼其為骨董先生。
姓は董、その名・号は忘れたるも、酷(きわ)めて骨董を説くを好み、ただちに呼びてそれ「骨董先生」と為せり。
姓は董で、名前や雅号は忘れてしまったが、とにかく骨董について説明するのが好きで、ひとびとは雅号などで呼ばずに「骨董先生」とじつに直接的な名前で呼んでいた。
先生貌奇古、多骨少肉、面凹黒、多斑点、有紫光、髯虬髪蒜。年七十余也。
先生、貌は奇古、多骨にして少肉、面は凹にして黒く、斑点多く、紫光ありて、髯は虬(きゅう)に髪は蒜(さん)たり。年七十余なり。
先生は古ぼけて変な顔をしていた。骨があちこち出ていて、肉は少ない。顔面はへこんでいるようで黒く、斑点があちこちにある。ひとみは紫いろで、ヒゲはひねりあがり、髪はのびるの草のようにふさふさしていた。当時、七十いくつの年齢であった。
先生は客があると、いつも
寒舎図書法物、鼎盤刀杖、一名一器、汗牛充棟、倶非秦漢下物。秦漢下物、不物色焉。
寒舎の図書・法物、鼎盤・刀杖、一名一器、汗牛充棟せるもの、ともに秦漢下の物にあらず。秦漢下の物は物色せざるなり。
「うちの店にある古書や古物、なべやお皿、刀、杖、一つ一つ名品で、部屋中にいっぱいになっているが、どれひとつとして秦漢以降のものはない(。紀元前三世紀前半の戦国以前のものばかりである)。秦漢以降のモノは入手しておりませんのじゃ」
と言うのであった。
確かに店にあるいろんな古物には、
必有模糊篆文幾字。
必ず模糊たる篆文の幾字あり。
必ず、ぼんやりと秦以前と思われる篆書が書かれているのである。
あるひと、篆書を読むことができると言って、手元の品をひっくり返してみたところ、
「・・・龍・・・漢・・・某・・・年・・・制・・・」
と読み解いた。
「これは龍漢何年かにつくられたもののようですが、龍漢とはあまり聞かない年号ですな」
骨董先生は頷いて答えた、
龍漢、盤古年号。
龍漢は盤古(ばんこ)の年号なり。
「龍漢というのは、天地を開闢した盤古のときの年号じゃよ」
うーん・・・。
盤古のあと、三皇五帝が出て、それから夏王朝になる、と伝統的には考えられておりまして、その五帝の最初が黄帝です。清朝の末に決められたところでは、1912年が黄帝即位紀元4610年だった・・・らしいので、それよりもずっとずっと昔の時代ということになります。
これは大したものだ。
先生家器具編年紀月、大半不離龍漢者近是。
先生の家の器具の編年紀月、大半は龍漢を離れざるもの、是とするに近し。
先生の家にある器具の作成された年月は、たいてい、この龍漢年間からそう遠くない時代のものだと推定された。
ところで、ある日、うちに寄ってくれた友人が
「ちょっと一服するか」
と
敲火吃淡巴菰。
火を敲きて「淡巴菰」を吃す。
燧金を叩き合わせて火をつけ、「たんばこ」(←タバコのことです)を吸い始めた。
そしてその燧金を見せびらかして言うに、
君識此火刀乎。乃夏王治水牌玄圭是也。偶然墜砕、用以敲火、取龍雷之火、妙意存焉。
君、この火刀を識るか。すなわち夏王治水の牌の玄圭ぞこれなり。偶然に墜砕し、以て敲火に用うるに、龍雷の火を取りて、妙意存せり。
「きみはこの火燧ちのナイフがなにものかわかるかね。これこそ、夏の禹王がまだ若く、黄河の水を治めるために働いていたとき、労働者を徴発するために当時の舜帝から割符として与えられた黒い角玉のかけらなのだ。角玉は古代の王さまたちの宝物だったのだが、たまたま落ちて砕けてしまった。それでその一部が火打用に使われているわけだが、叩き合わせると、雲に住む龍の持つ雷火がそこから噴き出してくるのだから、実にすばらしいものだよ」
「へー、それはすごい」
わたしは思わず感心して、
得非従斑竹巷中来乎。
斑竹巷中より来たるにあらざるを得んや。
「そんなすごいものは、斑竹巷(のあの店)から出たに決まっているよね」
と言いましたら、友人は
君何以知之。
君、何を以てこれを知るか。
「ええー! どうしてすぐわかるんだ」
と大いに驚いていた。
ちなみにこの店には「葉公所蔵龍画三軸」とか「夜郎包皮」とか「旅獒」とか「五色石」とか「桐輪木椀」とかおもしろいものがあったのですが、一つ一つの解説は、またいつの日かいたすことにいたしましょう。
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なぜなら明日が月曜日、もう夜が更けてきたからです。ツラいなあ。
清・破額山人「夜航船」巻四より。
わたしもこういう夢のあるネタで、ネット通信販売でひと稼ぎしよう・・・と何年も構想してきました。今回、骨董先生の活動を読んで勇気づけられた。ついに間もなく開店する、と思うのでよろちく!