わーい、わーい、週末である、ゴールデンウィークである、妖怪(キジムナ、みみちりボージ)、どうぶつ(シーサー、やどかり)はもちろん、人間だって遊びほうけるのが普通である。
休みたいよう。
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明の時代のことです。
浙江・呉興の山深いところに、峠を隔てて東と西に村がありました。この間の峠には、
虎狼出入、不分昼夜。
虎狼出入して昼夜を分かたず。
トラやオオカミが昼も夜も出没するというありさまでありました。
あるとき、東の村のキコリが塩とコメを交換するため、西の村で斗(マス)を借りて来たことがあり、使い終わったのですが手の離せない用事があって、
其日天晩、家有六歳小児、因命持斗還西村。
その日、天晩、家に六歳小児有り、命に因りて斗を持して西村に還さんとす。
その日の夕方近くに、家の六歳のコドモに命じて、マスを西の村に返しに行かせた。
「では行ってきまーちゅ」
と出かけたコドモ、四角いマスを手に持っているのに疲れてきて、
「そうだ、こうちよう、と」
将此斗戴於頭上而去。
この斗を将ちて頭上に戴きて去(ゆ)く。
マスの穴の方に頭を突っ込んで(ヘルメットみたいに)頭の上にかぶって、山道を行った。
「うっしっし、楽ちん、楽ちん」
ところが
中途偶遇狂風一陣、頭上之斗倏失所在矣。
中途、たまたま狂風一陣に遇い、頭上の斗、倐として所在を失えり。
途中で、突然、つむじかぜがどこかから吹いてきて、それに吹き飛ばされて、頭上のマスがどこかに飛んで行ってしまった。
「わーい、無くなってしまいまちたー」
そのまま西の村に行ってもしようがないので、コドモは
帰告其父。
帰りてその父に告ぐ。
家に帰りまして、おやじに「マスは何処かに行ってしまいまちたー」と報告した。
おやじは
「しかたがない、明日西の村に謝まりに行ってこよう」
と言いまして、その日はおちまい。
・・・・翌日、おやじが西の村に向かう途中、
忽見黄斑老虎死於谷口。
忽ち、黄斑の老虎の谷口に死するを見たり。
思いがけず、黄色いまだらの大きなトラが、谷の入り口のあたりに死んでいるのを見つけた。
そこでキコリ仲間を呼んで一緒に谷に降りてみると、そのトラは
喉間一斗在焉。
喉間に一斗在りき。
のどに、マスが詰まっていた。
けだし、トラは
本欲食児、不意銜斗觖望、
もと児を食らわんとするに、意(おも)わず斗を銜(ふく)みて觖望す。
「觖望」(けつぼう)は「欠望」とも書き、思い通りにならないので不満に思うこと。
コドモを食おうと思ってとびかかり、頭を食いちぎったと思ったのだが、思いがけずに頭上のマスに食いついてしまい、人間の頭ではなかったんでアタマに来たのであろう。
遂噛其斗以硬塞喉間、憤激至死。
ついにその斗を噛みて硬きを以て喉間を塞ぎ、憤激して死に至るならん。
とうとうマスを齧り食ってしまおうとして、それがのどに詰まってしまい、怒り狂って死んでしまったものと思われた。
いや、まったく、
児獲免於虎口。
児、虎口に免るるを獲るなり。
このコドモ、虎の口を逃れることを得た、というべきである。
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明・銭希言「獪園」第十六より。
わーい、このコドモはうまく逃れまちたねー。ところが、金曜の夜なので、おいらもほんとは本来の姿である肝冷童子に戻るべきところなのですが、明日の出勤を逃れることができず、オトナの姿のままです。ああ、イヤだなあ、どんどん心の歪んだオトナになっていくぜ。