モグとカエル。春になって出てくるのがこいつらみたいな弱小ドウブツだけなら問題ないのだが。
今日は寒かった。北関東では積雪だという。ひとの心のように冷たい空だ。
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清の時代です。
河南・汴中のひと林復、字・元一というひとは、若いうちから科挙試験の学問をするのを止めて、チャイナのあちこちを放浪して、後に浙江・呉江に住み着いていた。
彼は
精数学、識禽言。
数学に精(くわ)しく、禽言を識る。
「数学」といいましても、マテマチックスのことではございません。「数」の学、すなわち運命予知の学問のことです。
予言の学問に通じており、また、鳥のコトバを解した。
チャイナには予言の学問に通じたひとはたくさんおりますが、鳥のコトバを解したひとはそんなにいない。(参考→○論語集釈)
ある日。友人たちと窓辺でお茶を飲んで会話していたとき、
忽聞春禽弄舌。
忽ち春禽の弄舌するを聞く。
ふと、春の鳥が鳴いているのが聞こえた。(姿までは見えませんが)
友人たちは
「おお、鳥が鳴いておりますなあ」
「春先ですなあ」
と通り一ぺんのことを言ったのですが、林先生は
此鳥在第幾樹第幾枝第幾葉下囀。午後必有雨。
この鳥、第幾樹の第幾枝の第幾葉の下に在りて囀る。午後必ず雨有らん。
「ふむふむ、この鳥は、ここから○番目の木の○番目の枝の○番目の葉の下で鳴いておりますな。なるほど、なるほど。今日は昼下がりに必ず雨になる、そうですぞ」
文字を習いにきている童子(「書僮」)の中にいたずら者がおりまして、これを聞いて曰く、
林相公欺人太甚。鳥語綿蛮、樹枝稠密、安能弁別到爾声。
林相公、人を欺くことはなはだし。鳥語綿蛮とし、樹枝稠密なれば、いずくんぞよく爾に到るの声を弁別せんや。
「林先生、ひとを騙すのもいい加減にちてくだちゃいな。鳥の鳴き声は「ちゅんちゅん、きょっきょ」と何言っているかわかりませんし、木の枝は繁茂していて、鳥がどこにいるかわかりませんよ。どうやって、先生に聞こえた鳴き声をそんなふうに分析するができるんでちゅか(。できるはずありませんね)」
先生、苦笑しまして、
汝且住。金僕姑将及汝矣。
なんじしばらく住(と)どめよ。金僕姑(きん・ぼくこ)まさに汝に及ばんとすなり。
「おまえ、そこらへんで止めておけ。金色の下働きのお姐さんがおまえのところに来るぞ」
と脅した。
さて。
未幾、大雨如注。
いまだ幾ばくならずして、大雨注ぐが如し。
その日、しばらくすると、滝のような大雨が降ってきた。
さらに、
明日、此僮因拗花樹底、為黄蜂螫指、大痛。
明日、この僮、樹底に拗花せんとし、黄蜂に指を螫さるに因りて、大痛す。
翌日、この童子、木陰で花をねじり取ろうとして、黄色いハチに指を刺されて、たいへん痛いめに遭いました。
「わーん、これが「金色の下働きのお姐さん」でちたかー!」
始服之。
始めてこれに服す。
それからは林先生の言うことをよく聞くようになった。
のだそうでございます。
林先生はほかにも書、画、琴にも優れ、また囲碁も医術も得意だったのだそうで、当時浙江ではかなり有名なひとであったとのこと。
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清・破額山人「夜航船」巻一より。鳥のコトバがわかるとは、ドリトル先生のようでちゅね。
春先に鳥やらハチやら花やら出てくると、コドモはウキウキして痛い目に遭います。注意しなければいけません。みなさんも、オトナのつもりだろうけど。