モグが袖の下を持ってきた。中身は「拾ったタネ、五円玉、何ものとも知れぬ虫のカンピンタンにござりモグる。どうぞお収めを」ということである。コトバにして伝えられるようなまともな状況ではないようである。
明日は朝早いので早く寝ないと。朝早いと昼腹が減るんですよね。
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五代のひと、明真禅師・弘瑫(こうとう)に、ある僧が問うた。
向上一路、千聖不伝。未審和尚如何伝。
向上の一路は千聖の伝えざるところ。いまだ審らかにせず、和尚の如何に伝うるかを。
「向上一路」は禅の教えの中の一番上等で微妙な悟りの在り方をいう。
「悟りを得た方の「上の方の様子」は代々の聖者さまたちもコトバにして伝えてはおられません。さてさて、和尚さまはどんなふうに伝えなさりますか(もちろんお悟りでしょうから、おわかりなんでしょうけど)」
禅師はちょっとぽかんとして僧を見つめたが、ややあって言った。
且留口吃飯着。
しばらく口に吃飯を留着せよ。
「いま口に入れているメシをようく噛むのじゃぞ」
以上。
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「景徳伝燈録」巻十九より。
悟りなどというものは、日常の食うとか寝るとか行くとか坐るとかの中にしかないので、日常を超越した高等なところにあるわけではないらしいんです。
それはそれとしまして、腹が減るならよく噛んで食べろ、というのは重要な教えではある。