「秋でブなあ」・・・さて、このわんこは「わん!」と答える? それとも「ブウ!」と答える?
空の色も虫の音も、秋ですなあ。しかしツラいことが多い。季節は過ごしやすくなったとはいえ、やはりこちら側にいるのは気が進まないのである。
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孔子さまの家のわんこが死んだ。
孔子さまは、
吾聞之也。敝帷不棄、為埋馬也。敝蓋不棄、為埋狗也。
吾これを聞けり。「敝帷は棄てず、馬を埋めんがためなり。敝蓋は棄てず、狗を埋めんがためなり」と。
「わしが聞いているいにしえの教えにはこのようにある。
―――カーテンが破れても棄ててしまってはいけない。馬が死んだときに、それでくるんで埋めてやるために。日傘が壊れても棄ててしまってはいけない。イヌが死んだときに、それに載せて埋めてやるために。」
と呟きまして、
使子貢埋之。
子貢をしてこれを埋めしむ。
高弟の子貢に、わんこを埋めてやるように命じた。
「わかりまちたあ」
子貢は元気に返事をしまして、
「ところで先生、わんこの棺桶がわりの日傘はありまちゅかな?」
と問いました。
「それがじゃなあ・・・」
丘也貧、無蓋。
丘や貧、蓋無し。
「この丘(←孔子の実名)は貧乏人なので、日傘が無いのじゃ」
「それは困りまちたなあ」
「うーん、・・・あ、そうだ!」
と、ぴこーんと思いついたようです。
亦予之席。毋使其首陥焉。
またこれに席を予(あた)えん。その首をして陥らしむるなかれ。
「代わりに、わしの座布団をやろう。(それを坑の底に敷いて葬ってやってくれ。)そいつの首が地面に直接落ちてしまわないように」
「わかりまちたー」
しばらくしたら、
路馬死。
路に馬死せり。
道端に馬が死んでいた。
「うわーい、先生、馬が死んでまちゅよ」
「しかたがないなあ」
埋之以帷。
これを埋むるに帷を以てす。
先生は、家からカーテンを取り寄せて、これにくるんで埋めてやった。
「敝帷」(破れたカーテン)ではなくて、普通のカーテンでくるんでもいいのでしょうか。
―――この時死んでいたのは主君の馬だったから、特に破れたカーテンではなく普通のカーテンでくるんで葬ったのだ。
という注があります。しかし、孔子は貧乏だったから破れたカーテンも使っていただけでしょう。
「しようがない、明日からはみんな新聞紙の服を着て暮らすのだぞ」
「わーい、ごわごわしておもちろいなー」
と言いながら帰っていく孔子師弟の後ろ姿が想像されて、楽しいなー。
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「礼記」檀弓下篇より。
狗馬すら礼を以てこれを葬るのである。しかるにおいらにはどうしてこんなにツラく当たるのか、世間の風よ。