平成28年9月12日(月)  目次へ  前回に戻る

「秋でブなあ」・・・さて、このわんこは「わん!」と答える? それとも「ブウ!」と答える?

空の色も虫の音も、秋ですなあ。しかしツラいことが多い。季節は過ごしやすくなったとはいえ、やはりこちら側にいるのは気が進まないのである。

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孔子さまの家のわんこが死んだ。

孔子さまは、

吾聞之也。敝帷不棄、為埋馬也。敝蓋不棄、為埋狗也。

吾これを聞けり。「敝帷は棄てず、馬を埋めんがためなり。敝蓋は棄てず、狗を埋めんがためなり」と。

「わしが聞いているいにしえの教えにはこのようにある。

―――カーテンが破れても棄ててしまってはいけない。馬が死んだときに、それでくるんで埋めてやるために。日傘が壊れても棄ててしまってはいけない。イヌが死んだときに、それに載せて埋めてやるために。」

と呟きまして、

使子貢埋之。

子貢をしてこれを埋めしむ。

高弟の子貢に、わんこを埋めてやるように命じた。

「わかりまちたあ」

子貢は元気に返事をしまして、

「ところで先生、わんこの棺桶がわりの日傘はありまちゅかな?」

と問いました。

「それがじゃなあ・・・」

丘也貧、無蓋。

丘や貧、蓋無し。

「この丘(←孔子の実名)は貧乏人なので、日傘が無いのじゃ」

「それは困りまちたなあ」

「うーん、・・・あ、そうだ!」

と、ぴこーんと思いついたようです。

亦予之席。毋使其首陥焉。

またこれに席を予(あた)えん。その首をして陥らしむるなかれ。

「代わりに、わしの座布団をやろう。(それを坑の底に敷いて葬ってやってくれ。)そいつの首が地面に直接落ちてしまわないように」

「わかりまちたー」

しばらくしたら、

路馬死。

路に馬死せり。

道端に馬が死んでいた。

「うわーい、先生、馬が死んでまちゅよ」

「しかたがないなあ」

埋之以帷。

これを埋むるに帷を以てす。

先生は、家からカーテンを取り寄せて、これにくるんで埋めてやった。

「敝帷」(破れたカーテン)ではなくて、普通のカーテンでくるんでもいいのでしょうか。

―――この時死んでいたのは主君の馬だったから、特に破れたカーテンではなく普通のカーテンでくるんで葬ったのだ。

という注があります。しかし、孔子は貧乏だったから破れたカーテンも使っていただけでしょう。

「しようがない、明日からはみんな新聞紙の服を着て暮らすのだぞ」

「わーい、ごわごわしておもちろいなー」

と言いながら帰っていく孔子師弟の後ろ姿が想像されて、楽しいなー。

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「礼記」檀弓下篇より。

狗馬すら礼を以てこれを葬るのである。しかるにおいらにはどうしてこんなにツラく当たるのか、世間の風よ。

 

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