ぶーん。
今日は何曜日だっけ。
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俗世にも春風が吹いておるようです。
長江三月景偏饒。 長江の三月、景は偏(ひと)えに饒(ゆた)かなり。
柳正催顰花正嬌。 柳はまさに顰みを催して、花はまさに嬌たり。
この大きな川の春三月、みわたすかぎりの景色はにぎやかである。
やなぎはちょうど女性たちの眉をひそめさせようとする気配だし、花はちょうど盛りのあでやかさ。
「顰みを催す」は、春秋戦国の美女・西施さまが胸を病んでおられて、ときおり苦しくと眉をひそめた、その姿が一段と美しいというので女どもはそれを真似てみな眉をひそめたという「顰に傚う」の故事を踏まえて、柳の葉が、ちょうど美しい女性のひそめた眉のように柔らかに風にたなびくようになった、世間の女どもがそれを見て、真似ようかと思うに違いなかろう風情である、と言っている。
舟過白鷗渡頭水、 舟は過ぐ、白鷗渡頭の水、
春波依旧緑迢迢。 春波は旧に依りて緑迢迢たり。
わしの乗った船は、ちょうど「ゆりかもめ」の渡しのあたりを通り過ぎる。
春の波は去年のように一昨年のように、あおあおとして遠くはるかに広がっているなあ。
この「長江」はチャイナの長江ではなくて、江戸の隅田川。
すなわち、
春のうららの隅田川。
の景色です。
「白鷗」は隅田川に棲息する「ゆりかもめ」、古今・業平の
名にし負はばいざこと問はむ都鳥我が思ふひとはありやなしやと
(名前どおりであればみやこのことに詳しいのだろうから、さておまえに訊ねてみたいものだ、みやこどりよ。みやこ(平安京)に置いてきた、わたしの思いびとは、今も元気でいるかどうか)
で名高い「みやこどり」のことなんだそうです。
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永井荷風「濹上春遊二十絶」其一。
春ですなあ。・・・だが、明日は月曜日。しかも今週は史上マレにみるツラい週になるようなのである。