ぶうぶう。天気もよく、食糧は豊富。
月曜日からたくさん食った。苦しい。
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往昔之世、有一夫婦家道貧窘難以日度。
往昔の世、一夫婦有り、家道貧窘し、以て日を度ること難し。
むかしむかし、沖縄島の北部に夫婦がおったんじゃが、貧しくて、毎日の生活も困難だというほどであった。
平年でさえそんな生活であったのに、ある年、この地方はたいへんな飢饉に襲われたのであった。
飲食最絶、夫婦共赴奥村、要以討飯活命。
飲食最も絶し、夫婦ともに奥村に赴き、以て飯を討(もと)めて活命せんことを要(もと)む。
飲み物・食べ物にまったく困ってしまい、夫婦は奥という村に行って、食べ物を乞うて生き延びることにしたんじゃと。
「奥村」は固有名詞です。念のため。「奥の方の村」という意味ではありません。
行到途中、夫既餓極倐然跌倒、失気。
行きて途中に到るに、夫すでに餓え極りて、倐然(しゅくぜん)として跌(つまづ)き倒れ、気を失えり。
まだ奥村に行きつかぬうちに、夫の方はもうとにかく腹が減ってしまい、突然よろめき倒れて、そのまま意識を失ってしまった。
「ああ」
婦女大驚、跑到奥村、急討粥湯。
婦女大いに驚き、跑(あが)きて奥村に到り、急に粥湯を討(もと)む。
女房はびっくりして、大慌てで奥村まで至りつき、乞食して水のようなおかゆをもらった。
要進其夫而帯来、婦女気衰力疲而未能到夫所在之処、餓死於山路中。
その夫に進めんことを要めて帯び来たるも、婦女、気衰え力疲れ、いまだ夫の所在の処に到ることあたわざるに、山路中に餓死せり。
これをなんとか夫に食わせようと、大切に持って行こうとしたのだが、女房の方も気力・体力が限界まで衰え疲れており、いまだ夫の倒れているところにまで戻れないうちに、山道の途中で腹が減って餓死してしまった。
夫の方もそのまま餓死したのである。
注に曰く、
夫婦隔死之地三百余歩。
夫婦隔て死ぬるの地、三百余歩なり、と。
夫婦は三百歩ほどの距離を隔てて死んだのであるということだ。
あわれなことである。
行路之人、皆以憐憫之即折樹枝以覆其死骸焉。
行路の人、みな以てこれを憐憫し、樹枝を折りて以てその死骸を覆えり。
道を行き来するひとびとは、みなこの夫婦のことをあわれみ、木の枝を折り取ってそのむくろの上に懸けてやった。
南島のことですから、二人の死骸はすぐに腐って、やがて虫やバクテリアによって分解されていった。
今はただ、二人の死骸のあったところには、三百余歩を隔てて小さな土盛があるばかりであるが、
今之人、往還此路、必取樹枝以挿其塚之上。
今の人、この路を往還するに、必ず樹枝を取りて以てその塚の上に挿す。
現代(18世紀おわりころ)でも、この道を行き来するひとびとは、必ず木の枝を折り取って、二人の墓にその枝を挿すのである。
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だそうです。「遺老説伝」巻一より。わしは毎日腹いっぱい食う生活をしていて、いいのだろうか。