やっと週末。自由人に戻ります。
本日はドイツ料理+ビール。やはり席上寝た。嘲笑を浴びたと思うが寝ていたので気づかなかった。
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寝ている間で気づかなかったとはいえ、人を笑うとは怪しからん。
そのことについて思い出すに、むかしむかし、チャイナの地に梟陽(きゅうよう)という部族がおったという。
其為人、人面長脣、黒身有毛、反踵。
その人たるや、人面にして長脣、黒身にして毛有り、反踵なり。
その姿は、顔はニンゲンのようなのだが、くちびるが巨大で、全身は黒く、毛が生えていて、かかとが逆についている(足が後ろ向きになっている)。
彼らは、
見人笑亦笑、左手操管。
人の笑うを見てまた笑い、左手に管を操(と)る。
ニンゲンが(彼らを見て)笑うと、笑い返す。どういうわけか、左手に管を持っていることが多い。
というのである。その図を下に掲げる。
(←「管」らしきものを図では左手でなく右手に持っている。が、あまり細かいことを気にしてはいけない)
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「山海経」第十・海内南経より。人を笑うと笑い返されるから、気をつけた方がいいよー。
―――ところで、以上の記述だけを見て、
「人が笑うとそれを見て笑う、とは、愛想のいいやつらだなあ。彼らとは仲良しになれちょうでちゅよ」
などと思っている、大自然の恐ろしさを知らないコドモがいるかも知れません。なんとオロカで、お花畑アタマなことであろうか。もちろん、オトナならこんな表面的な記述を信用することはないであろう。
宋の博学の士、劉逵が「文選」の注釈を作っているが、その中に今はすでに佚してしまった唐の沈如筠の「異物志」を引用している。
この「異物志」の記すところを閲するに、
梟羊善食人、大口。
梟羊(きゅうよう)は善く人を食らい、大口なり。
梟羊族はニンゲンを食べるのが好きで、このために口がでかいのである。
という記述がある。
なんと! 口がでかいのはニンゲンを食べるためであったのだ。
其初得人、喜笑、則脣上覆額。移時而後食之。
その初めて人を得るに喜びて笑い、すなわち脣上がりて額を覆う。移時にして後、これを食らうなり。
ニンゲンを捕まえると、まず喜んで笑う。彼らは笑うと、くちびるが上方にめくれあがって、額まで覆ってしまうのだ。それからおもむろに、捕まえたニンゲンを食べるのである。
むしゃむしゃ。
なんと! 人を見て笑うのは、ニンゲンを捕まえて食べる喜びのためであったのだ。
それでは、「左手の管」とは何であろうか。
これは実は、梟羊族の持ち物ではない。
普通のニンゲンの方が、梟羊のいそうなところを通る時には、筒に腕を突っ込んでおくのである。
そして、
待執人、人即抽手従筒中出、鑿其脣於額而得擒之。
人を執らうるを待ちて、人即ち手を筒中より抽きて出だし、その脣を額に鑿ちて、得てこれを擒(と)らうるなり。
ニンゲンは梟羊族に捕まったとき、(彼らが笑ってくちびるが額を覆った瞬間)この筒の中から手を抜き出して、くちびるの上から(筒を)刺しこんで、額に縫い付けてしまうのだ。こうして、くちびるが額に縫い付けられて目が見えなくなったところを、逆に捕獲するのである。
なんと! 左手に管を持っている、というのは、ニンゲンが彼らを捕らえる道具のことを言っていたのだ。
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いやー、これは勉強になりましたね。みなさんもこのHPをご覧になった甲斐があったというものですぞ。