平成27年9月11日(金)  目次へ  前回に戻る

ウキキー。おいらたちサルの世界がおおむね↓の世界だキー。

第一肝冷斎です。わたし自身は山中に棲んでからはなかなか充実した人生を送っていますが、ほかの肝冷斎はまだ平地でうだうだシゴトしたりしているようです。向いてないと思うんですがね・・・。

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こちらのほうでは、

小国寡民、使有什伯之器而不用。

小国にして寡民、什伯(じゅうはく)の器有るも用いざらしむ。

「什伯の器」とは、「十・百の器」で、人力を十倍・百倍にするような機械のこと。

政治主体は小規模で、人口も少ない。便利でニンゲンの力を十倍、百倍にもする機械があるけれど使わないように指導されております。

そして、

使民重死、而不遠徙。

民をして死を重んじ、遠徙せざらしむ。

人民たちには生死のことを重視させ、(命が大事なので)遠くまで出かけないようにさせる。

と「使役」で読むと支配者の愚民政策みたいに読めまして、それだけで憤ってしまう人もおられますので、一行目同様にわたしども人民の受け身の側の言葉に直させていただきます。

わたしどもは自分の命を大切にし、遠いところまで出かけていかなくていいように指導していただいている。

以下、同様にわたしどもの立場で訳させていただきますね。

雖有舟輿、無所乗之。雖有甲兵、無所陳之。

舟輿有りといえどもこれに乗ずるところ無し。甲兵有りといえどもこれを陳するところ無し。

舟とか車とかの乗り物は知っているのですが、それに乗ってどこかに出かけていったことはございません。かぶととか武器も知っておりますが、それを使って戦いの陣列を組むということはしたことがございません。

使民復結縄而用之。

民をしてまた結縄してこれを用いさせしむ。

わたしどもは(文字を捨てて)原始の時代同様に、縄を結んで数字や簡単な記号の代わりにして、情報を伝達したり記録したりするのに使っております。

甘其食、美其服、安其居、楽其俗。

その食を甘しとし、その服を美なりとし、その居に安んじ、その俗を楽しむ。

自分たちの食べ物が一番うまいと思っておりますし、自分たちの服が一番立派だと思っております。自分たちの家屋に暮らし、自分たちの風俗の中に快楽を得ております。

ああ、楽しいなあ。

誰にも邪魔されたくないなあ。

隣国相望、鶏犬之声相聞、民至老死、不相往来。

隣国あい望み、鶏犬の声あい聞こゆも、民老死に至るまであい往来せず。

隣の政治主体はここから見えます。向こうさまのニワトリやイヌの声も聞こえます。しかし、その必要がないので、わたしどもは老いて死ぬるまで、お隣の政治主体とは行き来することがございません。

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すばらしい世界ですなあ。山中にあるわたしでさえ、なみだがにじんでくる。平地にあって苦しんでいる肝冷斎族たちなど、あまりにも感動してその場で心臓発作おこしたり舌を噛んだりして○んでしまうかも、というぐらい感動していることでありましょう。「小国寡民」の理想的な政治体制を説いている、として有名な「老子」第八十章です。

死ぬまで行き来しなくていいけど、災害のときは助けて欲しいし、侵略されたら集団的自衛してほしいカモ。

 

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