休みの日は楽しいゾウ
今日も寒かった。でもお休みだったので楽しかった。
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こころに賞でて楽しいこと―――
1)弄風研露、軽舟飛閤。
風を弄び露に研(みが)かれ、軽舟飛閤にあり。
そよ吹く風を楽しみ、しぶきに洗われながら、飛ぶように進む船の船室(にいるとき)。
2)山雨来、溪雲昇。
山雨来たり、溪雲昇る。
山からは涼しい雨が降りてきた。谷からはもやもやと雲が昇って行く(のが見えるとき)。
3)美人分香、高士訪竹。
美人、香りを分け、高士、竹を訪なう。
美しいひとがそばにいて、おれもその香りの中にいる。趣味のいいひとがふらりと、おれの家の竹を見に訪れてくれた。
4)鳥幽啼、花冷笑。
鳥は幽かに啼き、花は冷ややかに笑う。
鳥がかそけく鳴いており、花がひそかに咲いている。
5)釣徒帯烟水相邀。
釣徒、烟水を帯びて相邀(むか)う。
漁師が靄と霞を身にまといながら帰ってきて、お互いに挨拶しあっている(のを見る)。
6)老衲問偈。
老衲(のう)、偈を問う。
老僧が、短い詩語で教義上の問題を問いかけている(のを見る)。
7)奚奴弄柔翰。
奚奴、柔翰を弄ぶ。
幼い下女が柔らかな筆をいじって何やら書こうとしている(のを見る)。
それから、
8)試茗、掃落葉、趺坐、散坐、展古蹟、調鸚鵡。
茗を試み、落葉を掃い、趺坐し、散坐し、古蹟を展(ひろ)げ、鸚鵡を調う。
新茶を淹れてみること。落葉を掃除すること。あぐらをかいて楽してすわっていること。友だちが集まってあちこちにバラバラにすわっている状態。しまってあったむかしのひとの書を拡げて見ること。オウムにコトバを教えること。
などのもろもろ。
これらは楽しくて楽しくてしかたないことばかりである。
けれど、
乗其興之所適、無使神情太枯。
その興の適くところに乗じて、神情をはなはだ枯れしむる無かれ。
興趣のおもむくところに乗っかって、精神を涸れさせすぎてはいけない。
馮開之太史云、読書太楽則漫、太苦則渋。
馮開之太史云えり、「読書はなはだ楽しければすなわち漫、はなはだ苦しければすなわち渋」と。
太史の官にあった馮開之というひとが言っている。
「書物を読む際、いい書物に当たってものすごく楽しいときは、だんだん散漫になってしまうもの。難しいのに当たってものすごく苦しいときは、晦渋になってしまうもの。(ほどほどのがいいよね)」
三復斯言、深得我趣。
この言を三復せば、深く我が趣きを得ん。
このコトバを三回復唱してみてください。わたしの言いたいことがじんわりとわかってもらえるでしょう。
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明・呉従先「賞心楽事」五則のうち第三則(「明人小品集」所収)。
「こころに賞でて楽しくなること」シリーズの第三グループだ、ということです。ほかにまだ四則もあるんです。休みが続けば他のも教えてあげられるんだけどなあ・・・。