平成26年12月5日(金)  目次へ  前回に戻る

 

「儲かった」と思ったときはアブナい。

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南宋の乾道丙戌年(1166)夏、浙江・楽清県の港口で、

有蛟。出水長丈余。

蛟有り。水を出づる長さ丈余なり。

みずち(水龍)が出現した。水上に現れた部分だけで体長数メートルもあった。

それが見えなくなってから、

水吼二日、而海上浮銭甚多。

水の吼えること二日、而して海上に浮銭はなはだ多し。

海鳴りが二日にわたって聞こえ、そのあと海面にはなはだ多数の銭が浮かんだ。

「ええもん浮かんどるやないか」

「いただきや、濡れ手にアワや」

「儲かったでー」

と住民たちは喜んで銭を拾ったが、

有一父老識之、曰海将銭鬻人也。

一父老のこれを識る有り、曰く、「海まさに銭を将(もち)いて人を鬻ぐなり」と。

同様のことが起こったのを覚えているじじいがいて、怖れおののき言うに

「海が、この銭を用いて、ニンゲンを買い取りにきたのじゃ!」

と。

そして

風必作。

風必ず昨こらん。

「必ずや大いに風が吹いて嵐になろう」

と言って、

係舟于屋。

舟を屋に係く。

屋根に舟を繋いだ。

住民らはみなこの老人の言動を大笑いしていたが、

至八月十七日、海果溢、一県尽漂。其家独免。

八月十七日に至って海果たして溢れ、一県ことごとく漂う。その家はひとり免れたり。

八月十七日になると海が荒れ、水が陸地に溢れてきて、楽清県一帯はすべて水に流されてしまった。その老人の一家だけが助かったのである。

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明・朱国禎「湧幢小品」巻二十六より。

気をつけましょう。

 

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