平成26年12月4日(木)  目次へ  前回に戻る

「毎日何かを食べているわけですが」

これは今のところ食っていない。

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江南の邑溪の村に住民の家で、一匹の犬を飼っておった。

この犬、あるときから、

毎月出輙跳躍長吠。

月の出づるごとにすなわち跳躍し長吠す。

毎晩月が出ると、飛びかかろうとするように跳ねまわり、それに向かって長々と吠えるようになった。

如是者一年、犬形日就瘠。

かくのごときもの一年、犬形日に瘠に就けり。

そんなことが一年ほどになり、この閧ノ犬はどんどんやせ細ってしまった。

「この犬はもうだめじゃろう」

「では・・・」

「いっそのことアレするだよ」

ということになり、

其家取而烹之。

その家、取りてこれを烹る。

その家では、この犬を取り押さえて、煮た。

煮て食ったのである。

食っていると、

腹阯L物一枚、色状倶類鶏卵。

腹閧ノ物一枚有り、色・状ともに鶏卵に類す。

犬の腹腔からなんやら一個の丸いものが出てきた。色も形状もニワトリのタマゴみたいである。

ただ、

極其堅実、皎潤可愛。

極めてそれ堅実にして、皎潤愛すべきなり。

たいへん堅く、中に何かが詰まっており、ニワトリのタマゴと違ってどうやっても割れない。ぴかぴかと光り、表面にうるおいがあって実に愛玩したくなるものであった。

しばらくすると、有識者(物識り)と称する男がやってきた。

有識者見之知為狗宝。

有識者これを見て、知りて「狗宝」と為す。

その物知りおじさんはこの丸いものをつくづくと見て、

「これは『イヌの宝』といわれるモノじゃなあ」

と言った。

そして、

以微直售之而去。

微直を以てこれを售(か)いて去れり。

少額のお金を手渡すと、それを買い取って、去って行った。

ということで、どういうイワレがあってどういう役に立つものなのかはまったくわからず終わった。

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清・鄭仲夔「冷賞」巻六より。

二日続けて焼肉。いまのところ昨日も今日もワンコちゃんは食っておりません。

 

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