あたたかくなってきました。間もなく春だ。春になったらシガコも解けて、みなさんの願い事もかなうかも。STAP細胞もできるかも。
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おいらもカシコくな(って人を見返してや)りたいなあ、と願い事を言いながら清・陸次雲の「八紘譯史」を閲していましたところ、こんな話が載っていた(巻一)。
・・・明の正徳年間(1506〜1521)に、琉球国から
玉脂燈
というモノを貢進してきた。
どのような人(あるいは精霊か)の製したものかは不明だが、夜になると油を指さずとも自然に灯がともり、その光はたいへん明るい。それだけでなく、深夜たった一人でこの燈に向かって願い事を唱えれば、そのことの成否が、その灯のゆらめきの中に見える、ともいう。
皇帝、大いにこれを気に入り、
行幸必携之。
行幸必ずこれを携う。
お出かけになるときには、必ずこれを持ち運ばせた。
のであった。
さて、正徳年間、宮中と内閣に大いに力をふるい、帝位さえうかがったという奸人・劉瑾の耳にも、当然のようにこの燈の不思議な力のことが聞こえてきた。
「ほほう・・・。願い事を、のう・・・」
劉瑾は香山に行幸のあったとき、腹心の宦官に命じて、極秘に帝の荷物の中から玉脂燈を持ち出させ、深夜、
竊以自照。
ひそかに以て自ら照らす。
他人に隠れて、そっとその光を自らに向けた。
すると―――
燈忽放花如人面、眉目畢具。
燈、たちまち花を放ち人面の如く、眉目畢具せり。
燈の光は花が開くように広がり、そこに眉や目の完備した人間の顏が現れたのであった。
「おお・・・」
劉瑾は、その顏に向かって、ささやくように言った。
我成大事、封汝為光明大元帥。
我、大事を成さば、汝を封じて光明大元帥と為さん。
「わ、わしが大仕事をし遂げたあかつきには、おまえを光明大元帥と名付けて神として奉ってやろう・・・」
劉瑾のいう「大事」とは、皇位簒奪のことにほかならない。
「わしの大仕事は如何に・・・」
劉瑾が語りかけるうちに、はやくも燈はゆらめきはじめ、
花即凋萎。
花、すなわち凋萎す。
光の花は、すぐにしぼみはじめた。
さらに、
作咤噫声、飛越数尺。濺瑾衣袍、気腥如血。
咤噫(たい)の声を作して飛越すること数尺なり。瑾の衣袍に濺ぎて、気なまぐさきこと血の如し。
怒ったような唸り声を出して、数尺の高さのところをぐるぐると飛び回りはじめ、劉瑾の衣服の上に液体(これが「玉脂」であろう)を注ぎかけてきたが、それはまるで生血のようになまぐさい臭いがするのであった。
「な、なんじゃ、これは!」
瑾以金如意碎之。
瑾、金如意を以てこれを砕く。
劉瑾は手にしていた黄金の如意棒でこれを叩き落とし、打ち砕いた―――。
「い、いったい、どういうことだ・・・、わしの大事は果たして・・・」
劉瑾はしばらく砕け散った玉脂燈を見下ろしていたが、やがて気を取直して、近侍の者を呼び寄せると、破片を片付けさせたのであった。
―――いまだいくばくもなくして、劉瑾はそのたくらみが明らかとなり、誅殺されたのであった。
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どこから持ってきたのか知らんけど、すごい宝モノがあったのですなあ。琉球国で産出したものとも思われませんので、どこかから交易で手に入れてきたのでしょう。それなら、今は沖縄には無いのだ。沖縄に無ければ南シナ海あたりにあるのであろうか。あの国の権力者は、手に入れるためにどんな手段を用いてくるか、わかったものではないのである。