平成25年10月16日(水)  目次へ  前回に戻る

 

台風、行ってしまいました。伊豆大島をはじめたいへんな被害になったみたいです。

当方も、一気に季節が変わったみたいなので、うつ。わたしは、なにをやってもダメなモノなのでございます。理論もダメだし、実践もダメだ。

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慣例斎は両方ダメなようですが、世の中には

直於辞而不可用者。

辞に直にして用うるべからざる者あり。

理論はしっかりしているのだが、実践にはダメ、という者もおります。

例えば、春秋のころ、宋の国に高陽魋(こうよう・たい)という大夫がおりました。

このひと、

将為室、問匠人。

室を為らんとして、匠人に問う。

建物を造作しようと考えて、大工さんに作業について訊ねた。

大工さん曰く、

未可也。木尚生、加塗其上、必将橈。以生材任重塗、今雖成、後必敗。

いまだ可ならざるなり。木なお生、加えてその上に塗らば、必ず橈まんとす。生材を以て重ねて塗るに任ずれば、今は成るといえども、後必ず敗れん。

「まだしばらくお待ちくだされ。(ご用意した)木材はまだ生木ですので、その上に塗料を塗れば、必ず曲ってしまいます。生木の上に何度も塗料を塗りつければ、できたときはうまくできたように見えますが、しばらくすると壊れますので」

これを聞いて、高陽魋、

不然。

しからざらん。

「そうではないかも知れんではないか」

と反論した。

「わしが思うに、このようにも言えるのではなかろうか。

木枯則益勁、塗乾則益軽。以勁材任軽塗、今雖悪、後必善。

木は枯なればすなわちますます勁(つよ)く、塗りて乾けばすなわちますます軽し。勁材を以て軽く塗るに任ずれば、今は悪といえども、後必ず善からん。

木材というものは水気が無くなればどんどん強く硬くなるもの、塗料というのは乾けばどんどん軽くなるものじゃろう。強く硬くなる木材に軽くなる塗料を塗りつければ、できたときはよくないように見えても、しばらくすると善いモノになるのではないかな」

「いや、しかし・・・」

「反論があれば聞くぞ」

「直感的なものでございまして、その、なんというか・・・」

大工さんは

窮於辞、無以対。

辞に窮まり、以て対する無し。

ことばに窮してしまい、回答ができなくなった。

「反論ができないのなら、わしの方が正しいのじゃ」

「へえ・・・」

大工さんは、

受令而為室。

令を受けて室を為る。

高陽魋の指示を受けて、建物を造り始めた。

―――やがて出来ました。

出来た当初は立派な建物に見えたが、

後果敗。

後、果たして敗る。

しばらくしたら、やっぱり壊れた。

このように、理論はしっかりしているのだが、実践するとまったくダメ、という人がいるのでございます。

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「淮南子」巻十八より。

でも理論がしっかりしているだけわたしどもよりマシでございますよ。そしてそれよりもさらに優れた大工さん種族もいるのだ。ああ、わしはなんとダメなのだろう。ダメだ、ダメだ、ダメだ・・・。

・・・明日は今日よりもっとダメになっていると思いますが、もし今日と同じぐらいで下降線が止まっていてまだ気力がありましたら「海大魚」についてお話しとうございます。

「海大魚? なんだ、それは。ぜひとも知りたいぞ」

とお思いの方がもしもおられるようでしたら、ぜひわたくしの表の職場の方々に「これ以上、慣例斎を苦しめないでやってくだちゃい!」とコドモのふりしてお願いの手紙を出してみよう。コドモの訴えなら、優しさや情愛などを喪ってしまっている彼らの心にも届くかも知れませんから・・・。

 

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