今日は中秋の何やらの日で、三五夜中の新月の色皓皓と紅くございました。はあ。
今日の担当は、二千里外にも友だちの居ない、孤立せる伝令斎でございますじゃ。
え? 昨日までの勉励斎? 心配してやってくださって、ありがたい。彼に代わってお礼申し上げる次第じゃ。じゃが、彼はもう・・・人並なことを書こうとして・・・背伸びし過ぎたのじゃ・・・。
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むかしむかしのことですじゃ。
とあるところに幼い兄妹がありまして、野に出て遊び戯れておったという。ヘンゼルとグレーテルのように棄てられていたのかも知れません。
と、
空中堕一物、状類魚。
空中より一物の、状魚に類せるもの、堕つ。
空から魚みたいなモノが、落ちてきたのであった。
「うわあ、これはなんでちょう」
「おいちいかも」
ということで、二人は
共烹食之。
ともに烹てこれを食らう。
いっしょにそれを煮て食ってしまった。
コドモが火を使うと怒られますが、むかしむかしのことですので怒られなかったのでしょう。
さてさて―――
なんと、
明日男女皆暴長丈余。
明日、男女みな暴長すること丈余りなり。
翌日の朝起きてみると、この男の子と女の子、どちらも突然背丈が伸びて、3メートル以上になっていたのであった。
「うわあ、大きくなってちまいまちたー」
「どうちまちょう」
ところで、背丈が伸びただけで、二人とも体の太さはもとのままであったので、
痩如木。
痩なること木の如し。
まるで樹木のようにひょろりと細長くなってしまっていたのである。
立ち上がることもできません。
「うひゃあ」
「こまりまちたー」
二人は、
遂廃不能起。
ついに廃して起つあたわず。
起き上がることもできず、とうとうそのまま死んでしまった。
或以所食龍虫也。
或ひと、以て龍虫を食らうところとす。
あるひとが言った。
「おそらくそれは「龍虫」というセイブツを食べてしまったからだろう」
と。
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コワいですねー。やっぱり道端に落ちているモノを何も考えずに食べたりしてはいけないのです。おいらも気をつけなければ。
ところで、このお話、あまりにバカらしいので、伝令斎が錯乱してでった挙げたのではないかとお疑いになる人もあるかも知れませんが、ちゃんと清の楽鈞の撰した「耳食録」巻五に書いてあるのです。いかにも古典チュウゴク文学らしく、そこはかとなく残虐でございましょう。